研究課題/領域番号 |
20K00300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
田中 祐介 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (40723135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 日記 / 自己表象 / 自己語り / 書記文化 / 読書文化 / リテラシー / 戦争経験の継承 / アーカイブズ / 戦争の記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、明治以降に綴られた肉筆および活字の日記資料の包括データベースの構築と活用に基づき、近代日本の「日記文化」分析を促進するとともに、学際的・国際的な視座から研究成果を発展的に開く。具体的には、 1)個人の日記の「つづけ読み」により、その「自己語り」の構造を分析し、複数の日記の「並べ読み」により、歴史的経験を複眼的に考察する視座を得る。 2)Web公開した「近代日本の日記資料データベース」(β版、約1,000件)を拡充し、明治から平成にいたる肉筆および活字の日記の包括データベースとして刷新する 3)学際的な研究体制を強化し、東アジアの書記文化を主題とする国際的な研究体制の基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの影響は一昨年、昨年に比べ限定的となり、対面およびオンラインでの研究機会を一層充実化させ、計画を推進することができた。 本研究活動の中心となる研究会「近代日本の日記文化と自己表象」はハイブリッド開催とし、第32回(2022年7月30日、田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、2022年)書評会)、第33回(2022年9月24日、特別企画:NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争』制作の現場から)、第34回(2022年12月10日、共催:国立歴史民俗博物館基盤研究「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」)、第35回(2023年3月4日)の計4回を開催することができた。第35回では研究報告に加え、特別企画として松本篤氏(AHA! [Archive for Human Activities])による特別講演「11年間の育児日記を再読して 回想録『わたしは思い出す』制作の現場から」を設けることができた。 今年度最大の成果として、「日記文化」研究プロジェクトの第二弾となる論文集『無数のひとりが紡ぐ歴史ーー日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信刊)を刊行し、書評会を開催した(前段第32回研究会)。また、上掲書と同時進行的に制作に携わった和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境ーー日記資料から研究方法を拓く』の制作を進め、こちらも刊行に至った(2022年6月)。 以上に加え、特に太平洋戦争の経験を多角的に検証すべく、同時期に綴られた複数の日記を比較検証する「ならべ読み」(併読)を推進するためのワーキンググループを発足し、出版を前提とした研究会を計8回開催した。 以上の通り研究は大きく進展したが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う研究計画の変更の影響は大きく、活動年度を1年延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも触れたとおり、新型コロナウイルスの影響は一昨年、昨年に比べ限定的となり、対面およびオンラインでの研究機会を一層充実化させ、当初計画とは少々異なる道筋となったものの、順調に計画を推進することができた。 本研究活動の中心となる研究会「近代日本の日記文化と自己表象」は、これも「研究実績の概要」で述べたように、計4回を開催することができた。 加えて、研究成果を広く公開する論文集を刊行できたことも大きい。「日記文化」研究プロジェクトの第二弾となる論文集『無数のひとりが紡ぐ歴史ーー日記文化から近現代日本を照射する』を4月に文学通信より刊行することができた。加えて、研究代表者が制作に携わった和田敦彦編『職業作家の生活と出版環境ーー日記資料から研究方法を拓く』も6月に刊行するに至った。 本研究の目的の一つである日記の「並べ読み」の環境整備に関しては、太平洋戦争期に綴られた複数の日記を比較検証するためのワーキンググループを発足し、出版を前提とした研究会を計8回開催することができた。 東アジアを中心とする国際的連携については、今年度から研究代表者が運営する国立歴史民俗博物館の共同研究(基盤研究)である「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」との協働により、上掲第34回研究会の開催として、昨年度、一昨年度には着手できなかった計画を具体化することができた。また、日記にとどまらない広く個人の自己語りの媒体となる文書(いわゆる「エゴ・ドキュメント」)に視野を広げ、その成果の一部を『歴史評論』(2023年2月)に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
事業期間を1年間延長し、最終年度となる今年度(2023年度)は事業の総括、およびさらなる発展的研究を見据えた体制づくりに充てる。 まずは研究活動の中心となる研究会「近代日本の日記文化と自己表象」を継続的に開催する。近年の研究会では海外の研究者の報告も増え、手記や自伝などの「自己語り」に関する刺激的な報告が現れるなど、近代日本の「日記文化」を一層多角的に検証する機運が高まってきた。学際的・国際的な研究の場としての研究会の役割を十全に活かしたい。 国際的連携は、本研究の代表者(田中祐介)が代表を務める国立歴史民俗博物館の基盤研究「近代東アジアにおけるエゴ・ドキュメントの学際的・国際的研究」(2022年度-2024年度)との共同的活動により果たす計画である。その上で、年度末までに通例の研究会より規模の大きい学びの機会を作り、さらなる発展的研究への道を拓きたい。 並行して、太平洋戦争期の日記を「並べ読み」して学びを深めるような研究書の出版に向けて、ワーキンググループの活動を継続したい。現時点で複数分野の研究者、編集者、市民あわせて9名で活動しており、掲載する日記の選定と許諾を得て編集作業を進めている。あわせて、書籍の充実化を図るため、外部寄稿者との連携も進めている。年度末までには編集作業の大方を済ませる所存である。
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