研究課題/領域番号 |
20K00308
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 龍谷大学短期大学部 |
研究代表者 |
生駒 幸子 龍谷大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (10584849)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 絵本 / 翻訳絵本 / 検閲 / 岩波の子どもの本 / 翻訳方法 / 入札制度 / 絵本翻訳 / 異文化受容 / 占領期 / 絵本史 |
研究開始時の研究の概要 |
終戦間もない時期に出版された翻訳絵本には、混乱期において異文化との出合いに戸惑いつつも「異文化をどのように日本の子どもたちに伝えるのか」という問題に真摯に向き合う翻訳者・編集者の試行錯誤が垣間見られる。翻訳絵本には「自分とは異なる他者を理解し、共に生きる」異文化受容の様相が立ち現れており、絵本と出合う子どもに向けて世界平和を発信する姿がある。 本研究の目的は終戦から1954年12月までに出版された翻訳絵本にみられる異文化受容の様相を歴史的に検証することである。①戦後絵本史の出発点となった翻訳絵本の実態を解明する、②翻訳絵本にみられる異文化受容の様相を歴史的に検証する、2つに焦点を絞り研究する。
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研究実績の概要 |
本研究では戦後間もない時期に翻訳絵本において異文化がどのように受容されたのか実態と変遷を歴史的に考察すべく、1945年9月から1954年12月までを3期に分割し、戦後占領期のGHQ/SCAPによる検閲、翻訳権による出版など児童書出版を取り巻く状況等を調査したうえで、翻訳絵本の原書と訳書とを比較することで翻訳方法を検証した。2020年3月からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により当初予定していた3年間の研究スケジュールが大幅に遅れたが、研究期間を延長することによって当初の研究目的を概ね達成することができた。 第3期の1953年12月~1954年12月は〈岩波の子どもの本〉絵本シリーズ出版期(第1期:4回配本)にあたる。海外絵本の翻訳を多く含むこのシリーズは斬新かつ画期的であり、1960年代に花開く絵本出版の活況を予兆する、まさしく絵本史において現代絵本の萌芽期と位置付けられることが明らかになった。絵本における異文化理解の様相は海外絵本に描かれる食文化、生活や遊びに最も顕著にあらわれており、児童書出版関係者が戦争の反省をふまえ子どもの本に平和への願いを託していることもうかがえる。最終年度では入札制度による翻訳絵本に焦点を絞り、絵本翻訳の背景にあるGHQの翻訳斡旋である入札制度の実態、また当時の翻訳権の取り扱い、出版・印刷事情など関連する新聞・雑誌等から解明したうえで、絵本という表現メディアの特質である「絵」をどのように翻訳するのかという異文化受容の方法論における成熟過程を歴史的に検証した。この時期にアメリカの翻訳絵本が多いことは、子どものための文化財である絵本出版さえも占領期の検閲や入札制度による翻訳出版の影響を多大に受けていることの証左であり、戦中から戦後への思想・制度のパラダイムシフトの影響を余儀なくされていたことがわかる。
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