研究課題/領域番号 |
20K00313
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
須田 千里 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60216471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 久生十蘭 / 「新西遊記」 / 「黄泉から」 / 「白雪姫」 / 「犂氏の友情」 / 「黒い手帳」 / 「鈴木主水」 / 「湖畔」 / 「生霊」 / 「遣米日誌」 / 「彼岸過迄」 / 「それから」 / 「処女作の祟り」 / 近世日本国民史 / 「遣米日記」 / 「公用方秘録二件」 / 新西遊記 / 白雪姫 / チンダル『アルプスの氷河』 / 仏領西アフリカ横断記 / アジア探険五十年 / 蒙古草原の喇嘛廟と喇嘛踊り / 療法は百方尽せり されど王は死せり / 『大百科事典』 / 特別資料 / 神奈川近代文学館 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、神奈川近代文学館に所蔵される久生十蘭(一九〇二~五七)関係資料、すなわち、作品の草稿・原稿類、発表作品の切り抜きや手入れ資料、作品執筆に際し使用した雑誌・新聞記事など関連資料、同時代評、写真などの特別資料423点について、3年間の調査で詳細な記録を取るものである。また、作品の素材となった雑誌記事(作品毎に封筒に入れられていることが多い)と作品を照合することで、素材の確定や成立過程、推敲課程の跡付けを行う。 上記特別資料は作者が死ぬまで手元に置いていたもので、直筆草稿や書き込みのある第一級の一次資料であり、多大な研究成果が期待できる。
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研究成果の概要 |
神奈川近代文学館所蔵の久生十蘭(1902~57)関係資料を調査した結果、以下のような成果を得た。 「新西遊記」(昭和25年)について、久生十蘭遺品の封筒に入っていた記事から以下の材源を具体的に特定した。ハガード「療法は百方尽せり されど王は死せり」、吉田謙吉「蒙古草原の 喇嘛廟と喇嘛踊り」、ヘディン「雪のシベリア越境」、松岡譲「石室ひらく」、竹節作太「処女峰ナンダ・コツトに挑む」、アベ・ユック「韃靼見聞記」、アルマン「エヴェレスト征服の闘ひ」などである。また、「新西遊記(補遺)」の草稿(ペン書き)は、『西蔵旅行記』一四回~三一回の記述を圧縮したもので、虚構性は本作よりも低いことがわかった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
まず、久生十蘭旧蔵の資料を実際に調査して、「新西遊記」の素材を具体的に特定した点に学術的意義がある。また、調査の過程で他作品の材源もいくつか発見できた。たとえば、「白雪姫」がチンダル『アルプスの氷河』や平凡社『大百科事典』等に拠ること、「湖畔」に夏目漱石「坊っちやん」からの内容的影響のあること、「黄泉から」が、夏目漱石『彼岸過迄』『それから』に拠り、同じ千代という名を持つ「な泣きそ春の鳥」「つめる」ともども川端康成「処女作の祟り」に基づく心霊小説的枠組を持つこと等である。久生十蘭は近年人気を集めている作家であり、この研究成果によって久生十蘭への社会的関心を深めることが予想される。
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