研究課題/領域番号 |
20K00328
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 京都芸術大学 |
研究代表者 |
重田 みち 京都芸術大学, その他の研究科(大学院), 教授 (40399069)
|
研究分担者 |
古勝 隆一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (40303903)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 世阿弥 / 能楽論 / 漢文化(ハン・カルチャー) / 禅 / 儒教 / 足利将軍家 / 「室町文化」「日本の伝統文化」 / 文人文化 / 注釈学 / 芸道書 / 室町文化 / 武家文化 / 儒学 / 漢文化 |
研究開始時の研究の概要 |
室町時代初期の世阿弥の能楽論には、同人をとりまく社会的環境・思想・文化(将軍家サロン・京都の儒学・禅など)を大きく反映している。本研究ではこの視点を重視し、足利義持政権後半期・義教政権期(応永20年代後半-永享期)に成立した世阿弥の能楽論『至花道』『花鏡』『拾玉得花』『五音曲』『金島書』等20種近くの伝書類を対象として、将軍家権力や京都・奈良等の社会文化状況との関連を考察し、世阿弥能楽論をとらえ直す。同時に、世阿弥の芸道思想が、後続する能楽及び諸芸道に与えた影響を問う。 さらにこの新研究の成果を広く学界に発信すべく、その考察結果を盛り込んだ新しい世阿弥能楽論の校注・現代語訳を作成する。
|
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、世阿弥後期(足利義持政権後半期・義教政権期)の能楽論に関して以下の研究を行った。 (1)世阿弥後期の能楽論の出発点となる『風姿花伝』成立をテーマとした研究の大成(代表者)。代表者の関連既成論文と併せ、後期の伝書『花鏡』との関連、足利将軍家・漢文化の影響に関する新たな考察を行い、学術書1冊を刊行。『花伝』『風姿花伝』新校訂本文も作成し収録。 (2)世阿弥後期の能楽論と密接に関連する世阿弥の能作品を、足利将軍政権・漢文化の影響を中心に考察、論文1本・短文論考1本を発表(代表者)。 (3)本研究代表者が代表をつとめた共同研究「日本の伝統文化」を問い直す」(京都大学人文科学研究所、2020-2022年度、本研究分担者も参加)に基づき「室町文化」や武家文化に対する近代における認識の批判的検証を行い、英文論文1本を発表(代表者)、編著1冊を刊行(代表者編・分担者も分担)、世阿弥能楽論を含む日本中近世の文化の歴史的実態解明に向け新たな視点を提示した。 (4)日本中世の漢文化(中国古典・禅等)に関する2つの共同研究(京都大学人文科学研究所「「語りえぬもの」を語る行為とその思想表現に関する学際的研究―禅の言葉と翻訳を中心課題として」(代表:何燕生)・『玉燭宝典』研究(代表:本研究分担者)に参加し(代表者・分担者共)、世阿弥能楽論の地盤となる道元著作解読、日本中世における中国禅・漢籍の影響の考察を進めた。代表者は口頭発表1回を行った。 (3)の英文論文は国際シンポジウムでの口頭発表をもとに海外刊行物に発表した。同内容の中国語翻訳も国際的論文集の一部として刊行予定。(4)の共同研究は中国語圏・欧米圏の研究者もオンライン参加し国際的研究環境で行った。また上記以外に、本研究に係る社会的貢献として、世阿弥能楽論読解等の一般向け教養講座(代表者・分担者)、FMラジオ番組解説(代表者)を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題に関する代表者・分担者在住地域において可能な資料調査・収集や学術交流、それらに係る論文・単著・編著執筆を行い、大きな成果を上げることができたが、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、一部の研究作業・研究活動については時期や地域的範囲が限られ、本来行う予定であった作業・活動の中で行うことができないものが生じた。 特に、在住地域周辺以外での国内出張による資料調査・資料収集・学術交流が不足しており、昨年度までに海外出張による資料調査・国際学術交流を行うことができなかった。国際的な共同研究も国外参加者とはオンライン上での交流が主体となり、十分な学術交流を行ったとは言いがたい。 また上記の事情による資料調査・資料収集・学術交流の不足により、本研究に係る能楽論の訳注の作成に支障が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、世阿弥後期(足利義持政権後半期・義教政権期)の能楽論に関し、以下の(1)~(5)の研究を行う。(1)~(4)は主に代表者、一部を分担者が行い、(5)は主に分担者、一部を代表者が行う。 (1)世阿弥能楽論の、将軍家権力や京都・南都等の社会文化状況との関連に注目した新研究。本年度に引き続き、世阿弥後期の能楽論書に見える語句・概念や思想について考察する。また引き続き、世阿弥活動期頃の能作品の質的変化について能楽論と関連づけて考察する。以上の考察結果を、次年度刊行予定の世阿弥能楽論をテーマとした著書に盛り込み、加えて、次年度以降に論文3本程度を執筆する。 (2)上記(1)を踏まえ、本年度に引き続き、世阿弥能楽論の新しい校注・現代語訳を作成する。 (3)本年度に行った、世阿弥など室町時代の能楽論や能作品に対する近代の国際的思想家・啓蒙家の言説の批判的検証を引き続き行い、世阿弥や室町時代の能楽に関する歴史的研究の学際的・国際的な知見の共有と水準向上のための活動を行う。特に海外研究者(学生含む)との交流を本年度以上に行う。 (4)上記(1)(2)の世阿弥の能楽論の解釈・考察の成果をベースとし、上記(3)で獲得した新たな見解に基づき、世阿弥以降の能楽伝書、中近世の他の諸藝ジャンル、および文人文化に関する研究を行い、芸道書等の校注・解釈の研究へと展開するための足かがりとなる研究作業・学術交流を行う。 (5)足利将軍家周辺に多大な影響を与えた東アジアの漢文化を視野に入れるべきであり、それに関する研究を行う。世阿弥能楽論解釈に參照しうる中国思想・学術・宗教・文化に関する諸考察および論文執筆を本年度に引き続き行う。その際、世阿弥能楽論に特に関連が深い中国の「道」「源流」等の概念史・思想史にも本年度に引き続き留意する。
|