研究課題/領域番号 |
20K00331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
青木 美保 (秋枝美保) 福山大学, 人間文化学部, 教授 (40159330)
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研究分担者 |
平 浩一 国士舘大学, 文学部, 教授 (00583543)
平澤 信一 明星大学, 教育学部, 教授 (20270316)
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 嘱託教授 (30160584)
栗原 敦 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (40086822)
田中 雅和 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (40155164)
前田 貞昭 兵庫教育大学, その他部局等, 名誉教授 (60144797)
塩谷 昌弘 盛岡大学, 文学部, 准教授 (80644369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 日本近代文学史 / 明治・大正期地域文化史 / 地域文化人交流史 / 未公開書簡翻字 / 文学・美術分野横断研究 / 宮沢賢治文学 / 井伏鱒二文学 / 地方同学コミュニティ / 文学と美術分野横断研究 / 明治・大正文学史 / 1910年代文学 / 大正文学史 / 同学コミュニティ / 言語・絵画表現史 / 地域文化史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、井伏鱒二・宮沢賢治の文学を取り上げて、1910年代から1920年代にかけての文学の特徴を、文学形成という点から明らかにする。地方出身の作家における文学形成において、同じ学校の文学・美術愛好者の仲間意識―これを「同学コミュニティ」とする―から眺め、井伏は東京での大学での文学意識との影響関係を見、宮沢の場合は地方在住文学者という点から、井伏の郷里の文学仲間・高田類三との共通点を明らかにしながら、地方と中央の文化的影響関係から、文学史について新たな見方を提示しようとするものである。
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研究実績の概要 |
2023年2月に、『井伏鱒二未公開書簡集 ある級友への手紙』と題する書物を公刊し、井伏鱒二の、福山中学時代の同級生・高田類三宛の未公開書簡171通の翻字及び注釈を付すとともに、井伏・賢治の文学について「1910年代文化の行方―ロマン主義のリアル化」と題する解説を付して、当該書簡の資料的意義を明らかにするとともに、当該研究の発端となった貴重資料を近代文学研究者と共有することが可能となった。 この成果を踏まえて、3月5日・6日、岩手県内で研究メンバーが集合して研究集会を開いた。そこでは、研究代表者青木が、「井伏鱒二・宮沢賢治の文学史的位置づけについての仮説」と題して、今後の研究の総論に関する見通しを述べたことに続き、研究メンバーがそれぞれ研究の進捗状況について、報告を行った。 文学関係については、前田貞昭(井伏鱒二全集編集)が「高田類三宛て井伏書簡の特徴 附・父たちの文学活動」と題して、井伏の文学の基盤をなす地域の文学活動について述べた。栗原敦(宮沢賢治全集編集)は、「保阪嘉内宛時期不明書簡の位置づけの決定について」と題して、近年の研究成果を報告した。平浩一(文学史研究)は、「井伏鱒二による作家像の形成とその過程」と題して、井伏鱒二の場合について述べた。平澤信一(宮沢賢治作品研究)は、「宮沢賢治に関わるアザリア同人の作品・書簡・日記等における言及」と題して、盛岡高等農林同級生の同人誌に関する調査の報告を行った。 国語学関係については、田中雅和(国語史研究)が、「宮沢賢治自筆原稿・書簡における表記上の特徴」と題してこれまでの調査結果を報告した。大野眞男(現代日本語学)が「宮沢賢治「山男もの」童話の土俗的背景」と題して、地域学の観点からの調査の結果を報告した。なお、地域研究として、森 義真が「盛岡中学における賢治文学への影響」、森三紗が「森佐一の文学活動再考」と題して報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の中心的対象である資料を、翻字・解説付きで公刊したことにより、研究代表者およびその翻字を担当した研究者のみでなく、当該資料を、研究メンバー、及び近代文学研究者とともに研究対象として共有することが可能になったことは、当該研究の進展に大きな効果を及ぼすと言える。また、これまでコロナ感染のためにできなかった集会を初めて開くことができ、これまで2年間それぞれで進めてきた研究を対面で発表し合い、情報共有が進んだことが大きい。研究代表者の研究全体の見取り図を示し、研究の最終地点について、議論を交わすことができた。それは、今年度末に予定している第2回研究集会へのそれぞれの取り組みについて、具体的な計画につながって行くこととなる。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの研究分野を確定し、調査の対象と視点を明確化して、2024年3月に福山市内で研究集会を開き、研究全体の方向性を絞っていくことになる。 第一に、同学コミュニティの形成とその後の活動のあり方について調査を進めること。井伏鱒二の場合には、高田類三の文学活動の行方を、日記を解読することによって明らかにすることが必要である。それについて井伏の文学への影響関係の有無を調査する。高田は地方在住文学者として、地域で文学活動を続けたのであるが、それは同じく地方在住文学者であった賢治との比較が重要である。また、同学コミュニティの形成については、賢治の場合は盛岡高等農林時代についての更なる調査、及び中学時代の文学活動についての情報が少ないので、その周辺事情を当たる。これは、岩手県立図書館等での調査などが必要である。 第二に、井伏・高田・賢治の世代の表現活動の特徴を明らかにしていくこと。この調査については、拙編著『井伏鱒二未公開書簡集』の注・解説でも取り上げているが、言語表現の特徴として、短歌から詩、物語(小説・童話)へという表現変遷のあり方、視覚的描写など描写方法の特徴、方言の使用、といった点からの調査を観点を絞って行うこと。」また、題材としては、地域にまつわる事物を取り上げるという共通点があるので、共時的研究として二地点の比較を行う。 第三に、井伏・高田・賢治の文学の成立基盤として、宗教的環境という共通点があり、それが対社会の姿勢、思考、表現への影響を調査することが考えられる。特に、高田家・宮沢家は、祖父・父の代から浄土真宗の在家活動に熱心であったという共通点がある。そこには、大正期の、グローバルな仏教活動との関係を調査することが考えられる。
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