研究課題/領域番号 |
20K00334
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (80360056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 地誌 / 羇旅漫録 / 曲亭馬琴 / 近世 / 奇談 / 名所図会 / 諸国 / 19世紀 / 知 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸時代の18~19世紀にかけて、各地域の土地についての歴史や記録を掲載した地誌が盛んに刊行された。それらは原則、事実を標榜するものであるが、その中には物理的・文献的には裏付けることのできない情報も含まれている。一方、同時期には伝説・奇談をまとめた書物群も多数刊行されているが、18世紀末にはほぼ途絶えてしまう。本研究は、地誌の中に見られる奇談に注目し、そうした不確かな情報の扱い方を検証しながら、記録・文献/巷説(語り)・口承というメディア特性をも視野に入れ、19世紀以降の人々の〈知〉のあり方の劇的な変容を跡づけてみたい。
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研究実績の概要 |
本年度は、2022年度に全国学会で口頭発表した「曲亭馬琴『羇旅漫録』の諸本について―十方庵大浄本を中心に―」をもととした論文の執筆に注力し、投稿した。結果、査読を受け、来年度に採用が決定しており、本研究課題の中心となる成果をまとめることができた。論文の具体的な内容としては、まず前半に大浄書写系統『羇旅漫録』(通称「馬琴西遊記」)およびそれに先行する諸本の本文系統を整理し、後半において本文の改竄をめぐる諸問題について考察した。順番に記すと、①文化九年以前の『羇旅漫録』および馬琴西遊記本の諸本についての概要について、②馬琴西遊記本の諸本とその位置づけ、③十方庵大浄による本文の改変・加筆の具体相についての分析、④大浄の『羇旅漫録』の書写態度について論じた。大浄は自署をともなう追記にとどまらず、断りなく原文を改変し、時には旅の感懐や批判的言辞までをも勝手に書き加えており、こうした大浄の書写態度の背景には、原本を草案のように扱い上書きしようとする姿勢や、彼の同時代の戯作者への評価のあり方などが関与していたと結論づけた。 また、調査活動としては、6月、11月に大坂のキタとミナミを中心にフィールドワークを行った。船場や中之島周辺の町割、堀の埋め立て状況を確認した。また、ミナミにおいては、曲亭馬琴が『羇旅漫録』に記録している史跡群(たとえば茶臼山など)の現在の状況を確認した。また、11月には箱根の峠を旧東海道に沿って踏破し、当時の難所の具体相を理解することができた。 さらに、文献調査においては、当初から予定していたカリフォルニア大学バークレー校における調査を8月に行い、写本のうちに重要な資料を見出すことができた。10月には、これまで諸本を調査してきた地誌『信濃奇勝録』の一本を長野県立歴史館において調査したが、結果として稿本と認めるには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進んでいる。具体的には、文献調査については『羇旅漫録』の異本調査に関して、諸本系統を整理することができた。これを論文としてまとめ全国学会誌に発表することも決定し、この研究についてはおおよその道筋をつけることができた。また、フィールドワークについても、事前に入念に計画を立てたことにより、効率的に実施踏査を行うことができた。さらに、フィールドワークの記録についてはGPS機能付のカメラで写真撮影を行うことにより、近世から現代への変化を地理的、視覚的に比較できるよう配慮した。
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今後の研究の推進方策 |
曲亭馬琴『羇旅漫録』の諸本については論文化するに至ったものの、それらの諸本中に認められる具体的な異文については分量が膨大なため、稿を改める必要性が生じた。そこで本年度中に、「馬琴西遊記」における異文について、内容を分類しながら紹介する論文を執筆する予定である。また、地誌の調査に関して、当時の出版記録を参照することの有効性が視野に入ってきた。そこで着目するのが、近世後期において各書肆が有していた版権(株)の一覧表である「株帳」(「大坂本屋仲間記録」所収)である。この「株帳」については寛政期と文化期の二種類が存しており、ともに影印出版されている。しかしながら、モノクロ印刷であることにより印記の色などが判別できない問題があるので、まずは中之島図書館に所蔵されている文化期の「株帳」を全冊カラー撮影によりデジタル化する予定である。また、奇談を含む近世随筆のうち、伴蒿蹊『閑田耕筆』『閑田次筆』について、ひきつづき註釈を加えながら研究を進めていくことにしている。 フィールドワークについては鈴鹿方面の峠周辺の調査、文献調査については、パリ国立図書館などフランスの諸機関へ赴くことを計画している。また国内の諸機関の資料の調査も行う予定である。
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