研究課題/領域番号 |
20K00342
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
野本 瑠美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (40609187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 和歌文学 / 奉納 / 長歌 / 藤原俊成 / 崇徳院 / 手錢さの子 / 法楽 |
研究開始時の研究の概要 |
神社仏閣に奉納された和歌の研究は急速に進展している。だが、歌人・作品単位での成果が蓄積する一方、奉納和歌全体を把握する試みは殆どなされていない。そのため、論者によって「奉納」の定義が異なり、時には実態と乖離した定義も用いられている。本研究では、詠作状況から「奉納」を判断する手法を用い、和歌以外の事例も視野に入れながら「奉納」の事例を幅広く収集し、より広範な「奉納和歌史」を構築し、奉納和歌の実態を明らかにすることを目指す。そのために、次の3点を中心に取り組む。 ① 平安期奉納和歌における質的変化の解明 ② より広い視野による奉納和歌の通史的把握 ③ 奉納和歌に関する基礎的資料の調査と整備
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研究実績の概要 |
本研究は、より広汎な「奉納和歌史」を構築するため、奉納和歌の画期たる11世紀~12世紀の作例を中心に、和歌以外の事例も視野に入れながら、奉納和歌の実態を明らかにすることを目指している。令和5年度は、昨年度に引き続き(1)平安期奉納和歌における質的変化の解明、(2)奉納和歌に関する基礎的資料の調査と整備の2点を行う計画であった。 (1)については、奉納の変形として、「神仏に誓って和歌詠作を断つ」行為(=和歌起請)の事例を検討するため、同行為が確認できる西行・俊成・崇徳院について調査を行い、崇徳院遺詠が俊成・西行に及ぼした影響についての論考を以前まとめた。この成果をふまえ、崇徳院遺詠に見られる発想に寂然『法門百首』の影響が見られること、崇徳院遺詠を受け取った俊成が愛宕寺で追悼を行ったこと、俊成の遺影記録のタイミング等に関する新見を論文として発表した(「藤原俊成の崇徳院追悼―崇徳院遺詠を中心に―」『国語と国文学』100巻5号、2023年5月)。これは従来着目されてこなかった「愛宕」の場所を明らかにするのみならず、俊成の崇徳院追悼の意思や、当時の社会情勢による配慮等を明らかにし得た点でも、和歌研究上、意義深いものと考えている。 (2)については、昨年度に続き、「治承三十六人歌合」の伝本調査を継続している。本年度は、水戸彰考館所蔵の伝本の翻刻を行った。また、出雲市大社町にある手錢美術館が所蔵する幕末の女性歌人・手錢さの子の家集『朝宵草』の翻刻・紹介を行った。『朝宵草』には当時の寺社参詣や奉納に関する和歌が散見される。本研究が対象とする時代からは離れるが、奉納和歌研究のための資料の基礎整備として実施したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の刊行、資料紹介、資料調査が予定通り行えたため、上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、論文化に至らなかった崇徳院と西行の関係に関する論考をまとめたい。また、引き続き「平安期奉納和歌における質的変化の解明」という目的のもと、11~12世紀の事例を中心に調査を進めていく。具体的には、平安後期私家集の検討、勅撰集における奉納和歌の入集状況や所収部立・部立内での配置の変化等の調査を行い、本課題の決算としていきたい。 もう一つの目的「奉納和歌に関する基礎的資料の調査と整備」に関しては、引き続き「治承三十六人歌合」の調査を行い、主要伝本の翻刻を終わらせる。また、すでに調査を終えてる「天神仮託歌集」について、本文データや他出・重複の一覧の整備を引き続き進めていくこととする。
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