研究課題/領域番号 |
20K00356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
樹下 文隆 神戸女子大学, 文学部, 教授 (70195337)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 謡曲注釈書 / 謡抄 / 謡伝書 / 謡文化 / 謡本故実 / 謡曲拾葉抄 / 能楽論 / 近世学問史 / 謡本古実 / 謡曲参考鈔 |
研究開始時の研究の概要 |
『謡抄』『謡曲拾葉抄』『謡曲参考鈔』を中心に、近世成立の謡曲注釈書について書誌学的見地から本文批判を行うとともに、近代以前の謡曲注釈のあり方を、近世的な「学」の形成としての観点から検証する。特に注釈態度について、近世に成立した歌書・歌学書・物語・経典などの注釈書との比較を通して、その性質と依拠文献を明らかにする。『謡曲拾葉抄』については、写本と版本を校合した翻刻作業を行い、その成果を『定本・謡曲拾葉抄』(仮称)として刊行し、『謡曲参考鈔』の翻刻・公刊に向けた準備を行う。
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研究実績の概要 |
令和四年度に引き続き、『謡曲拾葉抄』版本の翻字作業を行った。巻六から巻九までの粗翻刻を終えることができた。また、『謡本故実』(東京芸術大学附属図書館)蔵に見る付箋、訂正、増補と版本との関係を整理し、前年の成果に続き、「東京芸術大学附属図書館蔵『謡本故実』推敲稿(二)」として、『神戸女子大学文学部紀要』(57巻、2024年3月)に掲載した。昨年度に立てた方針に基づき、版本の翻字作業を最優先したが、いまだ巻十から巻十五を残している。近世謡文化の研究に関しては、新たな知見を見出したものの、論考をまとめることができなかった。しかし、『謡本故実』の原本調査を二日間にわたって行い、およそ半分の調査を終えることができた。また、広島藩における謡文化の繁栄を示す資料の調査、江戸初期の部分謡本の調査などをすることができ、それによる知見を得ることもできた。 近世謡文化の研究を共同で行ってきたが、今年度には法政大学能楽研究所鴻山文庫蔵の『闇の夜鶴』という謡伝書を取り上げ、地方の武家に享受された謡が彼らの文化活動に大きな影響を与えたことを再確認した。これまでの研究蓄積を含めて、「能楽が支えた江戸文化」(『日本文学研究ジャーナル』28号、2023年12月)と題するエッセーを執筆し、広く一般の人々にも謡の教養に基づいて江戸時代の文化が成立していたことを理解してもらえたと思う。 また、前年度に引き続き、金春禅竹『五音三曲集』の注釈「『五音三曲集』「廿六声曲」注釈(三)」(『神女大国文』35号、2024年3月)を公表した。室町時代から江戸時代へと、能楽、特に謡が諸文化の影響を受けながら強固な基盤を構築していたことが、世阿弥や禅竹による用語の取捨選択の態度からも看取することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
入院・療養等を伴う研究代表者の健康上の理由により、本務や研究に専念できない期間が2ヶ月ほどあった。そのため、本務をこなすことに時間を費やさざるをえなくなり、十分な研究時間を確保できなかった。また、主たる調査先がいまだに閲覧時間に制限を設けていたため、原本調査を終了することができず、いくつかの機関における調査も断念せざるをえなかった。さらに、既存の文章作成ソフトでは対応しきれない箇所があり、翻字作業と他本との比較検討に想定以上の時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、自宅や研究室以外でも翻字作業が可能な体制を整えることができているので、全体の翻字完成に取り組むとともに、『謡本故実』原本の調査とそれに基づく版本との異同に関する報告をまとめる予定である。今年度中に翻字作業を終了し、それをベースに『謡本故実』との比較対照の結果をまとめる。可能ならば実験的に版本の翻字をpdfファイルによるインターネット公開への道筋を立て、将来的には神戸女子大学古典芸能研究センターのサイトで公開することにしたい。
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