研究課題/領域番号 |
20K00360
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
小林 健二 国文学研究資料館, その他部局等, 名誉教授 (70141992)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 能絵 / 能画 / 狂言絵 / 狂言画 / 絵巻 / 図巻 / 図帖 / 粉本 / 絵図 / 能 / 狂言 / 絵本 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、①江戸前・中期に作られた能絵や狂言絵の作品を渉猟して図像の分析を行い、粉本が形成された流れを追うことにあり、また、②その粉本の形成に土佐派や狩野派のやまと絵の絵師の関与があったことを解明する。また、③江戸中期の能役者でありながら能狂言絵を描いた福王雪岑の作画活動を明らかにし、④絵俳書の挿絵師として文芸史にも位置づけられることを考察することにある。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、①江戸前・中期に描かれた能絵や狂言絵の作例を渉猟して整理のうえ、図像の分析と比較検討を行い、粉本となる絵手本が形成された流れを追うこと、②その絵手本の形成に土佐派や狩野派のやまと絵の絵師の関与があったことを解明することにある。また、これまであまり手が付けられていなかった、③江戸中期の能役者でありながら能狂言絵の絵師として知られる福王雪岑の作画活動を明らかにし、④絵俳書の挿絵師として文芸史に位置づけられる存在であることを考察することにある。 ①に関しては、前年度に引き続き新型コロナウィルスの蔓延によって、令和4年度も海外への渡航が難しかったことにより、本研究において最も大きく位置づけていたアメリカ合衆国のボストンにあるハーバード美術館蔵土佐光起筆の資料調査と撮影が出来なかったので、国内に存する能・狂言絵の調査と考察を行った。 とくに平成30年に刊行された神戸女子大学古典芸能センター研究資料2『絵入謡本と能狂言絵』に所収される、神戸女子大学図書館蔵〔能狂言絵巻〕の画像のうち曲名が「高砂」と表記される図に関して、架蔵の〔能画絵巻〕の「老松」図とアメリカ合衆国ニュージャージー州のバーンスタインコレクションの「老松」図が同じ図柄であることから、〔能狂言絵巻〕が曲名を誤認表記したことについて明らかにした。また、そこから能狂言絵にしばしば記される曲名表記が、製作段階ではなく後に記されることがある可能性について考察し、研究発表を行った。 ③④の福王雪岑関係については、成城大学図書館に雪岑筆の絵巻が所蔵される情報を得たが、コロナウィルス蔓延などのために調査がかわなかったので、後日を期すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、引き続き新型コロナウィルスの蔓延により、海外渡航が不可能であったために、本研究において最も大きく位置づけていたアメリカ合衆国のハーバード美術館に所蔵される土佐光起筆の能絵資料150図の調査と撮影が実施困難となった。年度の後半には海外渡航の拘束も緩んできたが、同行する美術史研究者との都合が合わなかったりして実施することができなかった。そのために調査が可能な国内機関の資料調査を重点的に行うこととした。 調査が実施できたのが国会図書館と松岡美術館で、とくに松岡美術館は所蔵作品の修復調査や設備点検のため2019年6月2日から休館していたが、2022年春から開館したので、所蔵される狩野春笑筆『養老勅使図』屏風六曲一双の調査を行い、国会図書館蔵の狩野春笑筆『能楽図巻』に載る「養老」図との比較検討を実施し、その関係をまとめて「描かれた能楽―狩野春笑亮信の能画」(『国語と国文学』令和五年三月「芸能」特集号)として発表を行った。 狩野春笑亮信は他にも能絵・狂言絵の製作に関わていることが確認され、狩野派の画家の能画・狂言画との関わりを考察するうえで重要な人物であることも洗い出した。 福王雪岑の能・狂言絵の作画と俳書の挿絵師としての活動については、コロナ禍により身動きできないこの間は、調査可能な個人資料や収集済み画像資料の検討を行うとともに、今後の資料調査の実施に備えた情報の収集につとめたところ、成城大学図書館に能狂言絵巻が所蔵されるとの情報を得た。令和5年度に調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は国内外の能・狂言絵について、落款を有する作例を軸として製作実態の流れをつかむため、数多く存する能狂言絵の作例を可能な限り博捜して、詳細な書誌調査と撮影を行い、曲ごとの画像データを集成することになる。ところが、新型コロナウィルスの感染禍が完全に収束していない状態では、具体的な調査計画が立てられないままであった。 本年度は米国への渡航が許されるようになったので、ここ三年間繰越になっていたボストンのハーバード美術館を訪れて、土佐光起筆能絵の調査・撮影を実施したい。本資料は国内未紹介の資料であり、土佐光起の落款を有する150図という大部なもので、本研究において核となる資料である。 上記と合わせて狩野派の能狂言絵も、国会図書館蔵の狩野春笑筆『能楽図巻』と個人蔵の狩野春笑筆『春笑能狂言巻物』、それに署名・落款はないが春笑筆と思われる国立能楽堂の『御能狂言図巻』に載る図の比較検討を行って、狩野春笑の画風と粉本の流れを考察する。合わせて国立能楽堂蔵の狩野柳雪筆『能之図』絵巻など狩野派資料の調査も進めて、狩野派の能絵・狂言絵の粉本の流れを考察する。 狂言絵は、最も図数の多い徳川美術館蔵の『山脇流』とそれに次ぐ個人蔵の『古狂言後素帖』の調査を行い、国文学研究資料館の『狂言絵』も含めて比較検討を行い、粉本の流れを考察する。 また、福王雪岑の絵画資料は、前年から情報を得ている、成城大学図書館蔵の雪岑筆の絵巻の調査をおこない雪岑作品中の位置づけを行う。
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