研究課題/領域番号 |
20K00389
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
池園 宏 山口大学, 人文学部, 教授 (90222869)
|
研究分担者 |
荘中 孝之 京都女子大学, 文学部, 教授 (70390101)
松田 雅子 長崎外国語大学, 外国語学部, 客員研究員 (90249665)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | カズオ・イシグロ / 文学 / 音楽 / 歌詞 / アメリカ文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、2017年にノーベル文学賞を受賞した、現代英国を代表する小説家カズオ・イシグロの文学における音楽の影響や役割についての解明を試みる。作家としてデビューする以前、イシグロはシンガーソングライターを志し、多くの作詞を試みている。この青年時代の作詞活動に着目し、それを後年の執筆活動の原点と捉えて両者の関係性を探究することにより、あるいは当時イシグロが受けたアメリカ音楽の影響を分析することにより、従来のイシグロ研究にはない新たな視点からの解釈を試みる。
|
研究実績の概要 |
前年度の成果であるテキサス大学ハリー・ランサム・センター訪問、およびそこでのカズオ・イシグロ関連アーカイブ資料の閲覧収集作業によって、コロナウィルスの影響で遅延気味にあった本科研費研究に進展が見られた。主たるものは荘中孝之による論文“Tracing the Origin of Kazuo Ishiguro through His Early Song Lyrics”である。共同研究者三名は上記センターから取り寄せたイシグロの初期歌詞資料を輪読する研究会を初年度より継続的に行ってきたが、これに現地で収集した資料を加味する形で分析を行った成果が本論考である。この論文はイギリスのPalgrave Macmillan社より2024年1月に出版されたJapanese Perspectives on Kazuo Ishiguroに掲載されている。荘中は編集者の一人も兼ねているが、この書籍は日本のイシグロ研究者による初の英語論集であり、テーマは異なるものの松田雅子と池園宏も同じく寄稿している。松田は、イシグロの初期ルーツ研究の一環として、作品にみられる原爆表象と戦争責任の相克に焦点を当てた論文“Between the A-Bombing and Responsibilities for World War II: Changes in the Themes of Ishiguro’s Early Novels”を執筆した。池園は、若き初期段階より人間探究を深化させてきたイシグロが非人間を前景化するようになった最近の文学的動向を着眼点とする論文“Nonhuman/Posthuman Aspects in Kazuo Ishiguro’s New Millennium Novels”を執筆した。この他にも、三名は学会発表や公開講座を通して社会還元活動に広く携わっている(以下の他項目参照)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れ気味となっている主な理由は、過年度の報告書にも記しているが、コロナウィルスの継続的影響によって、本研究の計画当初より予定していたイギリス現地渡航調査が未実施の状況にあるためである。このための対応策として、すでに科研費の期間再延長申請を行い、これが受理されている。また、共同研究者三名はすでに遠隔および対面による研究会を開催し、渡航に関する今後の具体的な計画を練っている。これは予算消化の遅延の課題にも関わることであるが、この点も渡航の実施により解消されることが見込まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
科研費の期間再延長申請が受理されたことを受け、最終年度となる本年度においては、これまでと同様に共同研究および各研究者の個別研究をベースとしながら、その両輪の継続的実施により一定の成果の産出を目指す。共同研究については、従来の定期的な研究会の開催に加え、夏にはイギリスにおける現地渡航調査、さらに秋にはイシグロの郷里である長崎市において長崎外国語大学社会連携センターおよび新長崎学研究センターとの共同開催による公開講座・シンポジウムを計画している。渡航調査と公開講座・シンポジウムとの間には相乗効果の可能性も見込まれる。こうした種々の共同作業によって得られる知見を適宜取り入れつつ、各人は独自に設定した研究課題に継続的に取り組む。
|