研究課題/領域番号 |
20K00393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
伊東 裕起 城西大学, 語学教育センター, 准教授 (70617448)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | W. B. イェイツ / アイルランド文学 / ナショナル・アイデンティティ / 浮世絵 / ヨネ・ノグチ / 広重 / ジャポニズム / オリエンタリズム / 能楽 / W. B.イェイツ / アングロ=アイリッシュ / 骨の夢 / ヤコブ・ベーメ / 国際学会 / 俳句 / アリス・ミリガン / W・B・イェイツ / 比較文学 |
研究開始時の研究の概要 |
「想像の共同体」たるネイションの形成には、死者の追悼と同一視による神話の創造が重要である。日本の能楽、特に夢幻能は、幽霊を「シテ」として主役にする世界でもまれな文学形式である。イェイツは夢幻能に大きな影響を受け、彼独自の演劇を創作した。アイルランドの死者たちとの対話を行うそれらの能楽的演劇は、ネイションについて捉えなおすことを読者に迫るとともに、イェイツ自身のナショナル・アイデンティティを再考することにつながった。本研究では、能楽を含めた日本文学がイェイツに与えた影響を視野に入れながら、ネイション・ビルディング期におけるイェイツのナショナル・アイデンティティの形成を探求するものである。
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研究実績の概要 |
令和5年度は研究計画通り、研究のまとめのフェーズに入った。まず、前年度に学会発表を行った、ヨネ・ノグチ(野口米次郎)の浮世絵解説書『広重』とイェイツの関係について論文化して発表した。その際、学会発表時に織り込むことができなかった、小島烏水とヨネ・ノグチの”simplicity”観の相違や、イェイツがフランソワ・ヴィヨンに見出した”simplicity”の独自性などについて加筆することができた。 小島烏水は広重の浮世絵を「平俗」なものとし、その庶民性を評価していた。また子供のようなイノセンスなものだとしていた。しかし、その小島を引き合いに出したノグチは、広重の「単純」な画面構成は彼の内面の主観を対象に押し付ける芸術性から生まれているとし、“suggestive”な“simplicity”としてその著作で論じた。イェイツが『広重』に興味を抱いた理由には、このノグチの創造的誤読による独自な解釈の魅力が少なからずあったと思われる。 またイェイツにとってヴィヨンは、宗教の慰めなしに個人的な苦悩と向き合い、その苦難の中で人生の真実を“simple”に歌い上げた詩人として重要である。彼によれば、ヴィヨンの作品の持つ“simple”さは平穏無事な人生と穏やかな心から生まれたのではなく、激動の人生と荒れ狂う心から生まれたものなのだ。これはノグチの語る広重にも通じる姿である。 この年度の締めくくりに、この科研費プロジェクトのまとめとして、単著の出版のめどを立てた。これまで発表した論文を大幅に加筆修正し、出版社に入稿した。出版が2024年度にずれ込む形となったため、科研費の研究期間を1年延長する。2024年度は入稿済みの原稿に校正を施し、出版する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では2023年度に単著を出版し、研究のまとめとする予定であったが、出版が2024年度にずれこんでしまったため。しかしその分、新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は単著の出版を行う。原稿は出版社に送付済みであり、2024年度は校正作業に集中することとなる。
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