研究課題/領域番号 |
20K00402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高田 康成 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (10116056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | シェイクスピア / ローマ史劇 / 共和政 / 女性原理 / 貞節理念 / 独裁 / イギリス史劇 / 救済史 / 再生のサイクル / typology / 王権 / ローマ史 / 暴政 / 貞節 / 歴史のかたち / 政体 / 歴史 / ミステリー・サイクル / ナショナリズム / 最後の審判 / 歴史的解釈 / 主体 / 時間 / 循環 / ミメーシス |
研究開始時の研究の概要 |
シェイクスピアの作品世界には、2種類の歴史がある。一群の「英国歴史劇」があるかと思えば、他方に一連の「ローマ史劇」が存在する。前者は、創世記に始まり黙示録に終わる「救済史」、すなわちキリスト教世界の普遍的歴史観をその大前提とする。後者は、暴君の追放を通じた共和制ローマの樹立に始まり、共和政末期の混乱状態に終わる「異教ローマ史」という明確な前提の下に構想されている。これらの関係の解明を目的である。
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研究実績の概要 |
本年度は、第2年目に考察した〈ローマ史劇〉の再考を行った。得られた新たな知見は、以下の通りである。「共和政という政体の脱構築のプロセス」――共和政の始源は、『ルクリースの凌辱』に語られているごとく、凌辱を犯したタルクィニウス一族の追放と凌辱を受けたルクレティアが自らに下した自己浄化としての自害という形で、政体の制度的改革ではなく「貞潔」理念を具現する象徴的神話として語られた。しかし『コリオレイナス』では、そこで語られる「共和政体」の寓意が示すように、その政体の中心を司るのはエネルギーを供給する「腹」にあって、全体を律する統一原理の「頭」は不在のまま、コリオレイナスの非民的武勇を掣肘することができない。さらに『ジュリアス・シーザー』では、統一原理の不在を襲って台頭した独裁者に対して共和政の旗手ブルータスが立ち向かうが、彼の抱く共和政の理念は、カシアスという「鏡」を通して想起された「歴史神話」であり、しかもその「歴史神話」は本来的には「貞節」理念の具現化である「象徴神話」に留まる。共和政において民衆を護るために置かれた護民官を見ても、『コリオレイナス』ではその役割を果たすものの、『ジリアス・シーザー』では、独裁者のポピュリズムに懐柔されたため、本来の意味を失うところとなり、『アントニーとクレオパトラ』では、遂に姿を見せることがなくなる。さらに、共和政の始源にあった、「貞節」理念の具現化である「象徴神話」自体が解体消滅することになる。すなわち、この自己浄化の象徴的な力としての「貞節」という女性原理は、その対極にあるいわば「宇宙的昇華」の象徴的な力としての「エロス」という女性原理によって取って代わられることになる。ローマのルクレティアの自害がエジプトのクレオパトラの自害によって雲散し、それと同時にローマの共和政も霧消する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〈「英国史劇」対「ローマ史劇」〉というパターンの2巡目における「ローマ史劇」の再考であり、今までの個別作品の分析の総合として、一定の結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次回は最終年度に当たるので、〈「英国史劇」対「ローマ史劇」〉という基調から、〈「英国史劇」+「ローマ史劇」〉というかたちで、総合的な視点から論を纏めて行く。
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