研究課題/領域番号 |
20K00409
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大石 和欣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50348380)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ロマン主義 / 共感 / 慈善 / 女性 / 感情史 / 社会思想 / 博愛 / チャリティ / 感受性文化 / イギリス18世紀 / イギリス哲学 / 道徳思想 / 帝国主義 / 文学 / イギリス18世紀文学 / 奴隷貿易 / 植民地主義 / ユニタリアン / 思想史 / フィランスロピー / コスモポリタニズム / ヴィクトリア朝 / 感受性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代イギリスにおいて「共感」の心性が、政治的・社会的文脈のなかでどのように定義されたかを、18世紀後半から19世紀前半までの文学を中心とした言説のなかから抽出し、措定することを目的とする。「共感」は啓蒙思想において社会的美徳として称揚され、「感受性文化」のなかでも「同情」「憐憫」「情操」「仁愛」とともに道徳的価値を付与され、文学作品内にも組み込まれていく。社会との接面上で文学テクストが生成されるとき、そうした「共感」の言語がどのように機能しているのか。それを社会思想史の観点から文学研究において解明する。
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研究成果の概要 |
近代イギリスにおいてチャリティを含む「施し」の行為を支えた「共感」の心性は、啓蒙思想において社会的美徳として称揚され、「感受性文化」のなかでも「同情」「憐憫」「情操」「仁愛」とともに道徳的価値を付与され、文学作品内にも組み込まれていった。ロマン主義文学において、共感は最初はそうした感受性の言語の上に、フランス革命期の「博愛」の概念とも結びつけられるが、やがて詩人たち自身の実存的問題を救済する美徳へと転換され、功利主義やリベラリズム、それを反映した新救貧法に対する批判として機能しつつ、理想の共同体や教育のヴィジョンを構築していくことになった。その傾向はヴィクトリア朝文学にも流れこんでいる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
「共感」を軸にしてイギリス1780-1850の文学を貧困や奴隷制、経済政策との関係を論じることで、文学テクストが持つ歴史的、社会的、文化的意義を横断的かつ斬新な形で提示できた。世界に貧富やジェンダーの格差問題が指摘され、グローバル化への反動から移民排斥を含む保守反動勢力の活性化も顕著な現代において、「共感」が包摂するさまざまな可能性と問題が18世紀後半から19世紀前半のイギリス文学にも看取できることを証明し、それが現代社会の「共感」の質とあり方にも関わる問題として論じた点でとくに意義がある。感情史研究の知見も組み込むことで新しい人文学研究として現代社会の問題につながる方法論も提示できた。
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