研究課題/領域番号 |
20K00413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
結城 正美 青山学院大学, 文学部, 教授 (50303699)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | エコクリティシズム / 環境人文学 / 環境文学 / ネイチャーライティング / 大加速 / 人新世 / 核のごみ / リスク感覚 / リスク / 生存 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、リスクを確率論的事象としてだけでなく「不確実性の世界」(U.ベック)への応答としても捉える近年の研究動向を踏まえ、リスク感覚の基底にある多様な価値観を、文学に表された不安、混乱、畏れなどの感覚や情動に着目して明らかにする。リスク感覚とは、危機につながる事象を、主観的かつ生理的反応など、非言語的なレベルで感知する際に発動する感覚を指す。本研究では、リスク感覚を言語化する手段としてのナラティブ、イメージ、アンビエンスに着目し、リスク社会が到来する20世紀半ば以降の文学、とりわけ、「大加速」とよばれる1950年以降の社会・地球環境の大変化をめぐる文学に表出したリスク感覚を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究では二つの課題ーー課題1「「生存の文化」を参照枠とし、リスク感覚を表現形式の見地から分析する」、課題2「生存をめぐるリスク感覚に関する批評方法を洗練させる」ーーを設定しており、2022年度は、遅れ気味であった課題2に取り組むとともに、本研究課題全体を視野に入れて、主にHenry David Thoreau、Aldo Leopold、Terry Tempest Williamsのネイチャーライティング作品の分析を行なった。それぞれ19世紀半ば、20世紀前半、20世紀後期以降の作家で、社会背景は異なるものの、野性を台座とした文明論を展開している点で共通していることを明らかにし、社会経済的活動と地球システムの「大加速」を引き寄せた進歩史観(ないし「進歩の文化」)を相対化する準拠枠としての「野性」およびその詩学を分析した。その際、ネイチャーライティングを自然礼賛の書として軽視する批評動向それ自体を再検討することも重要と考え、米国西部でのフィールド調査をおこない、ポストコロニアルエコクリティシズムの知見も援用しながら、野生の自然をめぐるアメリカとアフリカの文化・文学表象の比較もおこなった。この研究成果は、単著書『文学は地球を想像するーーエコクリティシズムの挑戦』(岩波新書、2023年9月刊行予定)の一部として発表する(2023年3月脱稿)。 また、環境人文学の調査と実践は順調に進んでおり、昨年度同様、青山学院大学AGU環境人文学フォーラムの運営およびそこでの発表をおこなうとともに、国内外の環境人文学の動向と展望を論じた論文を『思想』(小特集・環境人文学)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文および新書というかたちで研究成果を整理し発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「生存の詩学」は進歩史観の見直しを迫る現代的意義をもつが、そのことが広く認識されることを可能にする表現形式も併せて考察する必要がある。こうした動向は、とりわけ気候変動を意識したアメリカの環境文学、エコクリティシズム、環境人文学に顕著であると考え、文献調査に加えて、関連する学術会議(具体的には、Colby Summer Institute in Environmental Humanities、メイン州、2023年7月30日ー8月6日)に参加し情報収集をおこなう。 2023年度は本研究課題の最終年度であり、研究成果を論文として発表する準備もおこなう。
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