研究課題/領域番号 |
20K00422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井出 新 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30193460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 英文学 / イギリス史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、十六世紀後半において絶大な人気を博した作家ロバート・グリーンを、1570年代から1590年代にかけてピューリタニズムの温床となったイングランド東部の都市ノリッジのローカルなコンテクストから捉え直そうとするものである。 具体的には、グリーンと彼の生まれ故郷であるノリッジのピューリタン市議会メンバー との人脈的繋がりを歴史史料から明らかにするとともに、グリーンを育てたノリッ ジの宗教的環境が改心物語群の「語り」にどのように関わったのか、そしてそれがグリーン自身の作家としての自己形成にどのような役割を果たしたのかを考察する。
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研究実績の概要 |
今年度はロバート・グリーンのノリッジ及びケンブリッジにおける活動の痕跡を探し、同時に回心体験物語『ロバート・グリーンの改悛』(1592年出版)の分析を昨年に引き続き行った。それによって以下の点が明らかとなった。 (1) グリーンは16 世紀文化に浸透していた回心体験物語を用いながら、故郷ノリッジのピューリタン共同体に復位した罪人として自分自身を成型し、出版戦略的に有利な立ち位置を確立しようとした。その際、彼がナラティヴに積極的に取り入れたのが、ノリッジのピューリタンに広く受け入れられていた教義と、ノリッジの聖アンドリューズ教会の説教者ジョン・モアの説教である。それらを体験談に組み込みながら、彼は自らの最後の劇的回心を描き、読者に向けて彼の「現実」を創り出そうとしている。 (2)グリーンのジョン・モアをはじめとするピューリタンとの関係を裏付ける資料は、ノリッジ市のノーフォーク・レコード・オフィスに所蔵されたノリッジの慈善院関係資料の中に見出される。モアの教会に属しており、慈善院の運営委員をしていたピューリタン有力者がグリーンのケンブリッジ進学に際して奨学金を給付していたのである。これによって、彼が回心体験物語においてノリッジのピューリタン共同体に復位した罪人として自分自身を描こうとした理由が推察される。つまり、自分自身の劇的回心にリアリズムを持たせること、そして自らをケンブリッジへと送りだしてくれた故郷の篤志家たち(特にモア)に対するオマージュである。 (3) したがって、グリーンの回心物語を、作者としてのアイデンティティを形作るために用いた単なる文学的技巧であり、事実無根のフィクションだったと考えるのは誤りである。ピューリタン共同体の一員としてのアイデンティティを形作ろうとするグリーンの基本的な姿勢が、ナラティヴのいわば下部構造として機能していたのである。
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