研究課題/領域番号 |
20K00429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
宮原 一成 関西学院大学, 教育学部, 教授 (10243875)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 教員養成 / 英語文学作品 / 教材 / 英語文学 / 教職課程教材 / 教職課程 / 英語文学教材化 / 医学教育と文学 / 教材化 |
研究開始時の研究の概要 |
中学生・高校生向けではなく教師を目指す大学生用の教材として、英語文学作品を活用する方策を探求する研究である。深い異文化理解や交流体験(文字を通すという擬似的シミュレーションではあるが)そして国際的倫理観の育成を効果的に行うための作品集および教科書(教授書)を編むことを将来的目的としつつ、文学読解実践を教育的観点から、すなわち様々な環境に―とくに英語圏という多くの日本人にとっては異文化である環境に―身を置く人物の心情や、秘めた心理的力学、隠された背景などを洞察するといった営みという観点から捉え直す。
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研究実績の概要 |
本研究は、英語文学作品を、大学生向けあるいは中学校・高等学校向けの語学教育の教材としてではなく、教師になることを目指す学生向けの教員養成課程教材として活用する方策および方法論を探る基礎研究である。 2023年度の主な成果は、2022年度同様に、研究論文の公表という形となった。教員養成課程に先駆けて文学作品を人材養成に用いてすでに成果を上げている医療従事者教育の現場を視察することは、2022年度に続いて断念した。主に参考にしたのは、英語文学研究の分野において蓄積され続けている読解・解釈の営みである。これらの「読み」の実践例を渉猟し、生徒指導などの場に応用可能な解釈法を考察した。 結果として1本の研究論文を完成し、1本の学会口頭発表を実施することができた。具体的に言うと、論文のほうは、カナダ人作家マーガレット・アトウッドの小説『キャッツ・アイ』(1988年、Cat's Eye)を、いじめ事象が人間の後半生に及ぼす影響や、その影響が人生の中でどのような発露の表現形態をとりうるかを、教職志望学生とともに考える授業を提案する論文である。特徴としては、主人公が成長した後に画家になっている、という物語の展開に着目し、主人公が制作する絵画作品の中に、少女期の被虐体験がさまざまな形で描き込まれていることを、学生が読み取って指摘していく、という授業の形を提案した。この論文は2023年度末刊行の大学研究紀要誌上にて公開した。 口頭発表は、マーティン・ブーバーの教育論と文学読解、特に文体論的アプローチについての内容のものである。具体的な作品の教材化の提案には至らないものの、そうした提案の基板の一つとなる考え方について考察した。こちらは、7月開催の国際文体論学会(PALA)年次大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来は研究の最終年度であったが、最終年度にふさわしい総括を行う時間的余裕はなかった。今年度新しく任された校務に1年間を通して忙殺されたことが大きく影響してしまった。研究期間を一年再延長することを申請した所以である。 曲がりなりにも論文を1本完成し、口頭発表を1本実施したことで、最低限の成果は上げられたように思う。上記に挙げた実績の他、対面形式で開催された学会への出張を、年度末までに複数回行って、貴重な治験の収集を行うことができた(調査出張は実施しなかったが)。なかでも日本英文学会大会では、登場人物の家庭環境のなかで明記されていない事柄に対する洞察の持ち方についての教育法につながる知見を複数得ることができた。 とはいえ、この年度は本来は研究の最終年度となる予定のものであるため、研究の締めくくりとなるようなまとめの論考をまとめるべきところであった。しかし残念ながらそれには至らなかった。上に述べたように、年間を通じて作業量が膨大な校務が予定外のタイミングで入ってきたことが原因であるが、この点、忸怩たるものがある。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間延長の結果、2024年度が本研究の最終年度となる。少なくともあと1本の事例研究を公表し、加えてこの基礎研究を総括する内容の論考をまとめたいと考えている。だが、遺憾なことに2024年度には授業担当の負担が激増してしまったため、本研究に当てることのできるエフォートの率は2023年度よりもさらに下がる見込みである。2年連続して逆風が吹くなかで研究を「推進」するのは難しいが、使える時間をすべてつぎ込む覚悟を固める、というくらいしか方策はあるまい。担当する授業の性質を考えると、これまで考案してきた授業案を学生を相手に試行してみることも、現実的ではなさそうである。とにかく、手を広げすぎることなく、これまでの成果を具体的な形でまとめ、発表することに力を傾注する予定である。 文学研究や文体論研究の学会から文学読解の新しい実践例を吸収することは続けたい。そのため旅費も効果的に利用したいと考えている。が、最優先課題は、最終年度にふさわしい締めくくりの論考をまとめることだと考えている。
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