研究課題/領域番号 |
20K00433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 近畿大学 (2021-2022) 松江工業高等専門学校 (2020) |
研究代表者 |
岸野 英美 (早水 英美 / 岸野英美) 近畿大学, 経営学部, 准教授 (90512252)
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研究分担者 |
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (70139468)
荒木 陽子 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (90511543)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 中国三峡ダム / ニューファンドランド・ラブラドール州 / Cli-Fi / カナダのエコ・フィクション / リタ・ウォン / ドナ・モリッシー / 国際ペンクラブ / 水 / 脱人間中心主義 / 水の表象 / ノヴァスコシア / 文学会議 / 人種的マイノリティ / カナダ西海岸 / カナダ東海岸 / カナダ人作家 / マーガレット・アトウッド / ヒロミ・ゴトー / 環境レイシズム / カナダ映画 / エレン・ペイジ / ジョナサン・キャンベル / アントロポセン(人新世) / カナダ文学 / 環境文学 / エコクリティシズム / (脱)人間主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人間活動が地球環境に多大な影響を及ぼす地質年代アントロポセン(人新世)において、地域的・人種的に多様なカナダの作家たちが、地球環境の変化や問題にいかなる態度を示してきたかを、主として1950年以降の作品を通して分析する。さらに作家・作品間の接点を探り、地球と人間の未来を問うアントロポセン時代のカナダの文学的特性、即ち自然界、特に地質学的歴史に位置づけられた人間の矮小さ、無力さや脱人間中心性というカナダ文学に通底する地球観を検証していく。
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研究実績の概要 |
2022年度は作家のルーツや故郷、特定の地域に対する意識が強く反映されている作品を中心に分析を行った。2022年度の大きな研究成果として日本カナダ文学会第40回年次大会シンポジウムでの発表が挙げられる。岸野は中国系カナダ人R.Wongの詩(20世紀世界最大級プロジェクトの一つ、中国三峡ダム建設をめぐるlips shape yangtze, chang jiang, river longingとfor bing ai)を取り上げ、前者には三峡ダム建設当初の長江と強制移住を余儀なくされた住民の重圧が、後者には複雑で不可視的な状況にあり、資本主義経済のグローバル化の影響を受ける三峡ダム建設の問題を巨視的なスケールで問い直そうとするWongの姿勢が読み取れることを論じた。荒木はD.MorrisseyのSylvanus Now三部作(Sylvanus Now, What They Wanted, The Fortunate Brother)を取り上げ、20世紀カナダ東海岸の水産資源の如何が、Morrissey自身の故郷であるNF州の漁港コミュニティと人間の移動だけでなく、遠く離れたON州やAB州の産油地域にも影響を及ぼしていることを明らかにした。佐藤はAtwoodの原稿(76回国際ペン大会での基調講演と東日本大震災後に日本の文芸誌から依頼された特別寄稿)に着目し、Atwoodが警鐘を鳴らす環境問題と文学との関連性を考察した。その後、3名は以上の原稿に加筆修正を施し、論文としてまとめた(『カナダ文学研究』第30号)。一方で、2023年3月に国際ワークショップを開催した。UNBのJ.Ball教授と中京大学のC.Armstrong教授に気候変動、水、大気汚染の問題が描かれているカナダのエコフィクションについてお話ししていただき、本研究課題に関する知識を共有することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022度は3名揃って日本カナダ文学会のシンポジウム「アントロポセン時代のカナダ文学を考える」にて発表を行い、その後、論文化することができた。また、2021年度に引き続き、コロナ禍でカナダからゲストを迎えることが難しいと思われたが、幸い、カナダ東海岸の文学およびエコフィクションに精通しているUNBのJ.Ball教授が来日することになったため、国際ワークショップを開催することができた。他にも、岸野は共著出版2冊、荒木は国際会議での発表2回、佐藤は国際会議での発表1回など多くの成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で2022年度も計画通り進まないことがあったが、3名はそれぞれ地道に研究活動を続け、予想以上に多くの成果を発表することができた。しかし、研究計画に入れているカナダでの現地調査を実施できていない。そのため一年延長する。コロナ禍がほぼ収束し、海外へ安全に渡航できるであろう2023年度に現地調査を行い、必要な資料を収集し、研究者や作家と交流する。さらに、これまでは個々の作品分析を中心に行ってきたが、地域、人種・民族的に多様な作家の作品の接点を考察し、まとめていきたい。
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