研究課題/領域番号 |
20K00434
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 和彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10205594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アメリカ南部文学 / 近代日本文学 / 戦後的思考 / 日本近代文学 / 敗北の文化 |
研究開始時の研究の概要 |
敗戦後に特徴的な文化状況を、ある土地や国に連綿と続いてきた内在の美学が敗北の瞬間に切断され、外部からもたらされた新たな美学によって緊急かつ不可避に置き換えられるという歴史的事態によって生み出され、もはや美学としての命脈を断たれたはずの旧美学(あるいはその亡霊的存在)と、せいぜい面従腹背をみずからに余儀なくするしか対処法のない新美学との両者が、存在の位相を異にしながら(たとえば「情」と「知」といったような形で)併存し続けるディレンマ状況と理解し、この理解に基づいてアメリカ南部と近代日本のそれぞれの文学においてその状況認識がいかに表出されているかを比較考察しようとするのが本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
本研究は南北戦争以後のアメリカ南部文学史を、W・シヴェルブシュの言う「敗北の文化」の所産、すなわちきわめて息の長い「戦後文学」の系譜としてとらえ、同時に同じ「敗北の文化」の所産として、先の大戦における敗北以降は言うまでもなく、近代以降の日本文学全体を通覧する一般的観点に依拠することによって、ふたつの「戦後文学」の比較考察の視座を確保してきた代表研究者のこれまでの研究成果を継承するものである。特に今回の研究においては、これまで南部文学と近代日本文学とがいずれも「戦後文学」ないし「敗北の文学」と呼びうる根拠と併せて指摘してきた両文学の相違に着目し、同じ「敗北の文化」の所産としての両文学の瞠目すべき肌合いの違いについて、それぞれの文学の直接的な背景にある両者に共通の思考様態を、戦前と戦後、ふたつの真実と正義のあいだに引き裂かれた一種のディレンマとして見据え、同じディレンマにおける強度の差を両文学のこの差異の根幹にあるものと仮説的に見なし、その強度の差を生み起こしている様々な要因をそれぞれの文学の特徴を顕著に有する作家たちの文学のうちに検証することで、その作業仮説の有効性を問うことを目標とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の根幹にある作業は、研究目的に示した作業仮説の有効性を、アメリカ南部文学ならびに日本近代文学のさまざまな作家・作品に検証することで、それぞれの作家・作品に独自に揺曳させる「戦後性」について、その周辺にある歴史的・伝記的文献を広く国内外に収集・吟味・比較検討するところにあったのだが、新型肺炎流行という事態にあい、現地におけるリサーチを自由に行うことが困難となり、かつまた現地における学会・研究会への参加、共同研究者ないし研究アドヴァイザーとして期待していた人物との交流や意見交換を必ずしも計画通りには進捗させられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
4箇年にわたって計画された本研究は、それぞれの年度に基本的に取り扱うべき作家たちをおおまかに時代順にわりふっていたのだが、それぞれの時代区分にあって、研究進捗状況に示した理由による研究の遅れによって、必ずしも十分に取り扱えなかった作家があり、それらをあらためて本研究の目的に照らして検証する作業を継続しておこないながら、続いてアメリカ南部文学ならびに日本近代文学における「後発近代性」という視点を導入して行う予定の新たな研究(昨年度中に新たな科研費を申請し、このたび採用決定の通知を得た)との融合を目指して、両文学における「戦後性」のより立体的な姿を析出する努力を行いたいと考えている。
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