研究課題/領域番号 |
20K00448
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京電機大学 (2022-2023) 日本女子大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
内藤 貴子 東京電機大学, 工学部, 講師 (60317609)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 児童文学 / 地球環境問題 / 人間と自然との絆 / 表象分析 / ファンタジー文学 / ファンタジー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、地球環境問題や「人間と自然との絆」を描く子どものための本(児童文学・絵本)を〈環境児童文学〉という一分野として確立し、歯止めのかからない地球環境悪化に対し、この分野の読書が子ども読者にもたらす環境意識の構築・変化こそが根本的な問題解決策となり得ることを検証する。児童文学は子ども読者に、日常的には実感しづらい地球環境変動の影響や自然との絆の喪失に気づかせ、自らの問題として主体的に考えさせることで持続可能な未来を拓く可能性を秘めている。英語圏と日本の作品の収集・評価、論点の抽出と考察、子ども読者の環境意識を構築・変容させ得る文学的機能の分析、読者の環境意識に関わる実践的調査を行う。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、地球環境問題と「人間と自然との絆」を描く子どものための本(児童文学・絵本)の調査・収集・分析を進めた。昨年度明らかになった不足項目と未収集作品を補完しつつ、最終年度でまとめる作品リストの整理補完と解題執筆作業を進めた。国内出版物についての研究成果の一部は、2023年8月に国際児童文学学会(IRSCL)世界大会(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)で口頭発表をし、質疑応答の場や学会期間中に、世界中の研究者と意見を交わすことができ、実りある気づきも多く得られた。なかでも、現代日本児童文学・アニメーション映画に描かれた、自然・動植物と人間との関係性や絆の有り様についての分析では、海外研究者から日本らしさについての感想や質問も多く受け、意見交換ができた。また今回は大会テーマがEcologies of Childhoodであったため、英語圏に限らず世界中の環境児童文学の作品についての情報、多様な分析の視点も得ることができ、学会中の催しでも環境と文学についての学びを深め、本研究課題に還元できる視点を多く得られた。学会後は出張先の図書館や書店を回り、物語と深く結びつく場所のフィールドワークも行うことで、現地でこそ入手できる未輸入書籍やパンフレットの収集が進み、作家・作品と自然環境・歴史文化的環境との結びつきを具体的に確認し深く理解した。地元の風土や文化環境に根差した物語を子ども向けにまとめた絵本や冊子もフィールドワークならではの収穫であり、マーケットには浮上してこない非商業的・地域的な活動の産物もまた、環境児童文学を形作る重要な柱の一つであることもわかった。出張中に行った複数の研究者へのインタビューを通じて、専門的知識の提供・助言も受けることができ、本研究で目指してきた〈環境児童文学〉という文学サブジャンルの確立条件の策定も進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の研究開始が2020年4月でコロナ禍とほぼ同時の歩みであったため、外出規制期間中における学校現場での調査・実践にかかる研究計画の変更はもとより、国内海外における調査にも支障が多々あったため研究期間延長は致し方なかった。2022年5月以降のコロナ規制緩和を受け、所属先においても海外出張が再び許可されるようになったため、当初計画にあった海外での学会発表・フィールドワークをやっと今年度実施できた。国内の図書館や書店での調査、出版社での取材といった実地活動も、コロナ規制緩和以後、2022年初夏からの実質この1年半の計算となるが、コロナ延長を許可いただき取り戻せてきている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに策定した論点を微修正・再編成しながら、作品の選定・収集・分析を研究期間と予算が許す限り更に進める。毎年新たな作品が続々と出版されるので、作品収集・分析の作業に終わりはないが、節目となる次年度で一度区切りをつけ、本研究の目的である〈環境児童文学〉の特性を明らかにすること、この分野の読書が子ども読者にもたらす環境意識の構築・変化こそが、 歯止めのかからない地球環境悪化に対する根本的な問題解決策となり得ることについての、現時点での検証結果を見極め、最終年度のまとめを行う。研究成果は、複数の学術論文にまとめるとともに、広く一般に向けても還元する。
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