研究課題/領域番号 |
20K00450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永井 容子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (80306860)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 19世紀英文学 / 女性作家 / 隠蔽 / 匿名性 / 自己開示 / 視点 / 19世紀定期刊行物 / ジョージ・エリオット / ジェイン・オースティン / 自己成型 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、J. Austen、C. Johnstone、H. Martineau、E. Gaskell、G. Eliot、M. Oliphant、C. Rossettiが身分を隠蔽して執筆家として活動したことが、自己開示、更には自己成型を促す作家戦略であったことを立証することを目的とする。これにより、19世紀英国ジャーナリズムおよび文壇における女性の立ち位置を見直し、男性を中心に据えるこれまでの19世紀英文学史観を塗り替えることを目指す。
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研究実績の概要 |
研究4年目にあたる2023年度は最終年度となるが、これまで収集した資料およびその分析結果を用いて考察を進めてきた研究内容を英語論文として英国の学会誌に投稿し、The George Eliot Review, No. 54に掲載された。同論文“Revelation Through Dissimulation: The Relevance of Pseudonymity in George Eliot’s Writings”は、国際デジタル・アーカイブ(George Eliot Archive)においても公開された。 ミッシェル・フーコーは、作者名をその作者が手がける小説のあり方、または小説の存在様態を表すものとして捉えた。この理論を用いてジョージ・エリオットを始めとした女性作家の作品を匿名性という観点から考察した。多角的で多重的な視点がもたらす不確実性、そしてそれによって生じる「捉えどころのなさ」がエリオットやオースティン作品の一つの特徴であることを示し、「捉えどころのなさ」こそが、匿名・偽名の性質そのものを表すものであることを明らかにした。作家が匿名・偽名を用いて小説を発表するのは一種の自己防衛であると同時に、自らの作品と一定の距離を保ち、多角的な視点や多様な解釈を容易にする一つの作家戦略と理解することができる。 研究4年目にあたる2023年度は、研究の総括をする態勢がほぼ整っていたと言えるが、19世紀英国女性執筆家のジャーナリズムおよび文壇への功績をウェブサイトで情報発信する作業がまだ途中であることと、研究成果の最終的な発表へ向けての精査に万全を期すべく、研究期間を1年延長することとした。 2023年度は、その他にもGeorge Eliotの作品における科学知識についての論考を国際学会Commission on Science & Literatureの大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、英国での資料収集は実施不可能であったが、研究2年目にあたる2021年度と研究3年目にあたる2022年度は、予定していた年2回の海外渡航のうち1回は実現し、イギリス・バーミンガムで開催された国際学会BAVS(British Association of Victorian Studies)2022 Conferenceにて研究発表を行なった。そして、研究4年にあたる2023年度は英国に1回渡航し、British Library(イギリス・ロンドン)およびNuneaton Library and Information Centre(イギリス・ナニートン)において一次資料の調査研究を進めることができた。2023年度は、これまで4年間に蓄積してきた資料と分析結果をまとめて国内外へ研究成果の発信を遂行することができた。2021年12月11日の日本ジョージ・エリオット協会全国大会シンポジウムで発表した論考をさらに発展させたものが、2023年3月に春風社より上梓された共著書『オースティンとエリオット<深淵なる関係>の謎を探る』の第3章「オースティンとエリオットー匿名性と作品を取り巻く視点」として公開された。また、19世紀女性作家が身分を隠蔽することが彼女たちの内なる「声」を表す自己開示の手段であったことをジョージ・エリオットを中心に考察した論文Revelation Through Dissimulation: The Relevance of Pseudonymity in George Eliot’s Writingsが、英国の学会誌(The George Eliot Review, No. 54, pp. 44-54)に掲載され、国際デジタル・アーカイブ(George Eliot Archive)においても公開された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、2023年度に最終年度を迎えたが、研究成果の最終的な発表へ向けての精査やウェブサイトでの情報発信を進めるために研究期間を1年延長することにした。2024年度も夏に渡英し、成果発表の論文を執筆しつつ、海外研究者との意見交換をさらに進めながら本研究の総括をも同時並行的に遂行する。ウェブサイトを通しての成果の発信を含め、研究計画調書に記載されている内容を全て完了させる。ジョージ・エリオット関連の研究では、論文「ジョージ・エリオット再評価―ユーモアから垣間見えるもの」が2024年刊行予定の『最新イギリス小説研究』(仮題・慶應義塾大学出版会)に掲載される。また、2024年3月に国際学会(Commission on Science & Literature)で発表した論考Permeable Boundaries Between Popular and Professional Scientific Knowledge in George Eliot’s Worksをさらに発展させて、英文著書として刊行する計画も同時に進めることになる。
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