研究課題/領域番号 |
20K00452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
飯野 友幸 上智大学, 文学部, 教授 (40168084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | モダニズム / ポストモダニズム / 抒情詩 / 予言者的詩人 / アメリカ現代詩 |
研究開始時の研究の概要 |
現代英語圏作家には、一方でモダニズム作家を意識することでその伝統と遺産を継承し、一方でそれを差異化して現代性と革新性を示す特徴が見られる。本研究は、そんな作家のうちからFrank O’Hara、John Ashbery、Elizabeth Bishopを取り上げ、詩人と〈文化制度・施設〉の関係に着目する。それにより、詩人を〈文化制度・施設〉、〈アメリカ型資本主義が支配的な主流文学市場〉、〈詩作という文学作品創造の場〉のせめぎ合いの中に再配置し、そこに立ち現れるモダニズムとの関係をメタモダニズムとして検討することによって、これらの詩人を新たに歴史化し、政治性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度もコロナ禍が終息しきらないなか、海外での資料収集および海外研究者招聘は3年連続で見送ることにした。その代わり、まず上智大学アメリカ・カナダ研究所との共催により、モダニズム期のアメリカ詩人についてのコロキアム(講演をとおしてのセミナー)を開催することにした。 3年目となる昨年度は、2022年11月17日に上智大学アメリカ・カナダ研究所において、対面とオンラインにより、20世紀前半にアメリカのみならず欧米および日本にも大きな影響をおよぼした詩人・批評家のT.S.エリオットについて、上智大学文学部・英文学科助教の町本亮大先生に「T. S. エリオットとイギリス観念論」と題する講義をしていただいた。 アメリカのセント・ルイス出身とはいえ、後半生をイギリスで過ごしたエリオットは、19世紀後半のイギリス経験論哲学者F.H.ブラッドリーからいかに影響を受けたか、という内容で、町本氏特有の広汎なリサーチに基づく講演は科研の研究課題にとって大きな刺激となった。なお、聴衆は計17名で、質疑応答も活発におこなわれた。 コロキアムにくわえて、論文も執筆することができた。「"self-styled prophet--John Ashberyの初期詩編における転回」と題し、『英文学と英語学』(上智大学文学部紀要分冊)に発表した。内容的には、上記の講演で語られたエリオットに影響を受けたアメリカ詩人ジョン・アシュベリーが、1960年代後半にロマン派以来の抒情詩を全面的に採用することで、スタイルを一新し、それまでなかったような社会性のある作品を生み出し始め、同時代の激動するアメリカ文化をいかに反映したかを跡づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロキアムは3年目ということで、エズラ・パウンド、ガートルード・スタインに続いてやはりアメリカ詩のモダニズムを牽引したT.S.エリオットについての講演を開催することで、連続性と累加性の両方の面での成果を上げることで、20世紀前半のアメリカ詩の流れ整理し、さらに新たな光を当てることができたから。 また、2021年度に詩人ジョン・アシュベリーによる代表作『凸面鏡の自画像』の新訳と解題を左右社より出版したが、1970年代中期に書かれたこの詩集にいたる数年間の詩人の思想的発展を分析するため、「"self-styled prophet--John Ashberyの初期詩編における転回」という論文を出版することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では20世紀中期にモダニズムとポストモダニズムの架け橋をした3人の詩人、エリザベス・ビショップ、ジョン・アシュベリーそしてフランク・オハラを研究することにより、第二次世界大戦後からヴェトナム戦争終息までのおよそ30年間のアメリカ詩を文化的・社会的な側面から照射することを目的としていて、ビショップとアシュベリーについては2020年度から2022年度にかけて論文2本と著書1冊を出版してきた。 最終年度となる4年目の2023年度には、オハラに焦点をあてるが、その際に1990年あたりから盛んになってきた日常性の研究を当てはめて論文を執筆する予定である。 それによって、究極的には3人の詩人がモダニズムの表現基盤の大きな要素でもあったフランス由来のシュルレアリスムからいかに脱して、アメリカにおけるポストモダニズムの詩学の基礎を築いていったかを証明したい。
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