研究課題/領域番号 |
20K00465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中地 義和 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (50188942)
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研究分担者 |
鈴木 雅生 学習院大学, 文学部, 教授 (30431878)
MARIANNE SIMON・O 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (70447457)
塚本 昌則 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90242081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ル・クレジオ / アジア文化 / 文学 / 書物 / 翻訳 / 韓国小説 / 漢詩 / 極東アジア文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代フランスの最も重要な作家の一人で、きわめて特異な作家でもあるル・クレジオを対象に、非西洋の文化、なかでも中国、韓国、日本の東アジア文化が、彼の知的形成にどう作用し、その創作にいかなる霊感を与えてきたかを、半世紀以上に及ぶ創作活動を視野に収めながら解明しようとするものである。ル・クレジオ研究者で彼の作品の翻訳や分析を行なってきた二名と、フランス20‐21世紀の作家における非西洋の牽引の問題に関心を寄せる二名とが協力し、戦後、フランス語圏文学やクレオール文学の台頭と併行して顕著になった脱‐西欧中心主義の文学・思想の潮流を踏まえながら、この作家の独自な位置を定義することをめざす。
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研究実績の概要 |
ル・クレジオは2013年から2017年にかけて毎年秋の学期に、中国南京大学の招聘教授を務め、文学と芸術を広い視野でとらえる講義を行ないながら、中国の作家や文化人との交流を深めた。また、中国各地を旅しながら文学と書物をめぐる一連の講演を行なった。中国で行なった十五の講演が2019年、『中国における十五の語らい 詩的冒険と文学的交流』の題で一巻にまとめられた。この講演集から得られる情報は、本研究にとってきわめて重要で、研究協力者の鈴木雅生は、今年度これを翻訳し、詳しい解説を添えた(邦題『ル・クレジオ、文学と書物への愛を語る』作品社、2022年)。 ル・クレジオはまた、2020年には北京大学教授ドン・チャンの協力を得て漢詩のアンソロジーと解説を兼ねた美装本『詩の波は流れ続ける』を刊行し、年来の中国古典文学への関心の果実を公にした。研究代表者および他の研究協力者は、今年度は主として、この書物に反映している言語観やアニミズム的自然観の分析に取り組んだ。 これら近年刊行された書物には、作家の東アジア文化をめぐる理解の深まりが確認できるが、同時に、現代中国がはらむ政治的・人道的問題には立ち入ることを回避しているかのような姿勢が見てとれる。この点は本研究と密接に関連する新たな課題であると受け止めている。 また、研究代表者は目下、作家が8歳から14歳までの7年間の毎夏、南仏ニースから夏季休暇を過ごしに移り住んだブルターニュ地方の村の思い出をつづった自伝的作品『ブルターニュの歌』(2020年刊)の翻訳・研究を進めている。アジア文化には直接関わらないが、ケルト文化の色濃いブルターニュはフランスのなかの辺境であり、今日独立分離主義者が活動している地域である。作家の反‐西欧中心主義を考えるうえで重要な要素であるという認識を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここ数年ル・クレジオが集中的に発表してきた、韓国小説や、漢詩および現代中国文学をめぐる評論・講演集には、異文化に固有の論理や慣習を共感的に見極めたうえで、言語や慣習の違いを越えて、普遍性な相においてそれをとらえ直そうとする姿勢が顕著である。また、そうした小説や評論には、作家の現時点での知見のみならず、若年時からのアジアへの関心の変遷を理解するためのヒントも含まれている。こうした面の解明が本研究を通して徐々にではあるが確実に進みつつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究最終年となる2023年度の第一の目標は、過去3年間の成果、とくに作家が近年次々と発表してきた極東アジアと関係の深い小説や評論の翻訳・分析を通して得られたさまざまな成果を、作家とアジアとの関係の現状のみならず長い変遷の角度から総括する。 第二の目標として、20代から中米インディアンやスペイン侵攻以前のアメリカ大陸古典文明(マヤ、アステカ)に関心を寄せ、ヨーロッパ中心主義を相対化し、非西洋から創作の糧を汲みとってきた作家の目に、極東アジアの文化がどのような示唆や可能性をはらんでいるのか、その定義を試みる。
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