研究課題/領域番号 |
20K00471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 金沢大学 (2021-2022) 神戸大学 (2020) |
研究代表者 |
南 コニー 金沢大学, 国際機構, 准教授 (10623811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | サルトル / キルケゴール / 状況演劇 / 反復 / 民衆法廷 / 実存思想 / モラル / アンガージュマン / ジェンダー / 単独的普遍 / ラッセル法廷 / グローバルジャスティス / フェミニズム / グローバル・ジャスティス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、サルトルがその晩年のモラル論の中で提起した概念「単独的普遍」がいかにして「ラッセル法廷」へと展開していったのか、その過程を読み解きつつ、今後の可能性を探ろうとする考察である。「ラッセル法廷」は、1967年、ベトナム戦争の犯罪性を訴えるラッセルとサルトルの両者によってストックホルム、東京、ロスキレの三都市で開催され、世界的に大きな反響を呼び起こしたが、このような民衆法廷は今日もなお、国際格差の是正を求める「グローバル・ジャスティス」の動きと連動して世界中で開催されている。この法廷をサルトル晩年のモラル論の有意義な展開のひとつと位置づけつつ、現代的意義を探り、その射程を究明する。
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研究実績の概要 |
サルトルは状況演劇という演繹的方法で、キルケゴールが創始した実存主義思想を大衆と共有したことで知られている。それは、戦争や貧困、階級や時代によって条件づけられた状況下の人間が感じる葛藤や疎外感を表現するとともに、それらへの抵抗を通して人間の在り方を問う一つの<呼びかけ>である。人間の自由意志と選択の問題を扱う状況演劇は1950年代頃から盛んに上演され、日本でも唐十郎や大江健三郎などの作家に大きな影響を与えた。とりわけ『出口なし』(1944)は、今日でも世界中で上演され続けている。それは不条理な状況が解消されていないからに他ならない。世代を超えて上演され、人々に生き方や在り方を問うこのような状況演劇は、キルケゴールにおける「反復」であるとサルトルは言う。「反復」は物事の傍観者ではなく、状況の当事者であることを求める。かつてサルトルはベトナム戦争におけるアメリカの戦争犯罪を糾弾するために民衆法廷を創始したが、世界各国から「茶番劇」だとの非難を浴びた。しかし、最終的には三度の開廷を経て戦争犯罪を暴き、民衆法廷を常設化するに至った。この過程で彼は、客観的な知を拠り所にするのではなく、「真理を生成する」ことが重要であると述べている。ここでいう真理とはキルケゴールにおける主体的な「非―真理」であり、自らへの問いかけにより各々が自分に立ち戻ることで生成されうる。当事者として状況を生きることで初めて可能になるのである。サルトルは「キルケゴールを読むことによって、私は私にまで遡り、私はこの意味するものをとらえたいと思う。私がとらえるのは、私である。非―概念的なこの著作は、全ての概念の泉として、私を理解するための一つの誘いである」(『生けるキルケゴール』)と言う。本研究では、サルトルの状況演劇とキルケゴールにおける「反復」の関係性について考察したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のせいで、当初予定していたフランスや北欧諸国での資料収集はできなかったが、すでに収集をし終えている文献の解読を通して、中心のテーマとなるサルトルの後期思想ばかりでなく、それを手掛かりとしたイプセンの『人形の家』の分析や、ジェンダー思想の展開にも研究を展開し、それぞれにおいて成果をまとめることができたので、おおむね順調に研究計画が進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの状況が改善されているので、近いうちにヨーロッパへの渡航計画を立て、資料収集に向かうとともに、すでに入手済みの資料をさらに研究して論文の執筆を進める所存である。
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