研究課題/領域番号 |
20K00476
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
間瀬 幸江 宮城学院女子大学, 一般教育部, 准教授 (20339724)
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研究分担者 |
國枝 孝弘 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (70286623)
安部 芳絵 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (90386574)
越門 勝彦 明治大学, 法学部, 専任准教授 (80565391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 声の主体 / 記憶と記録 / 美化 / 文学 / 聴くこと / ラジオ / 領域横断性 / ゆらぎ / 災い / 架橋性 |
研究開始時の研究の概要 |
疫病発生や気候変動に伴う災いが頻発する今日、我々が災いを直視し相互主体的に生きるには、被災者の声を美化し消費する欲望に抗わねばならない。本研究は、被災の記憶が残る地から現在形で発せられる当事者の生きた声に耳を傾け記述する社会科学的実践を、すでに記述された過去の「声」に耳を傾け解釈する文学・哲学・歴史学の人文学的アプローチに接続することで、ありのままの声に耳を傾け記録・伝承するためのリテラシーと当時者意識の涵養を下支えする、理論的枠組みの言語化を目指す。
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研究実績の概要 |
「災い」の語りを聴くことに着目する本研究は、人文学領域と社会学領域を架橋し研究領域のすそ野を広げることを重視する考えから、語り手のもとに赴いてのインタビューを伴うフィールドワーク型研究を目指して2020年度に始まったが、新型コロナウイルス感染症拡大のあおりを受け、研究手法の修正を伴って進行してきた。まず初年度は、研究の進捗状況をリアルタイムで公表する仕組み(サイト構築とラジオ番組出演)を整え、続く2~4年目はこの仕組みに則り、対面での研究会実施に準ずる活動としてのラジオによる研究報告を行った。放送音源アーカイブは専用の動画チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCxwnlr8Q6O4R22h-7RUypRQ)に公開済みである。また、研究期間3年目にあたる2022年度はインタビューを伴う調査出張(兵庫県立舞子高等学校環境防災科3年生8名)を一度実施した。さらに、初年度、二年度の2年分の研究活動の成果を同人誌「声のつながり創刊号」(ISSN番号を取得し国立国会図書館に納品)にまとめた。2023年度に研究の中心軸となった問いは、語り手から他者が声を奪う恐れと、語りの主体を他者が尊重する営みとしての「声を聴く」こととが表裏一体であり得る気づきを踏まえた、語る主体と聴く主体それぞれの視点の言語化の試みであった。これについて異なる専門領域から意見交換をする機会として、2024年2月24日、公開シンポジウム「声の気配(けはい)を聴く」を宮城学院女子大学にて開催した。ラジオ番組音源作成による研究会以外は、研究会はそれまで、セミ・クローズドで行ってきたが、このイベントは対面・オンラインのハイブリッド型での公開とし、のべ80人が聴講、研究成果を広く世に問うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間を1年延長したため「やや遅れている」としたが、これは本研究が成果を得ていないことを意味しない。本研究課題は、代表者、分担者、協力者などの専門領域が多様であることを重視するが、いずれも「声を聴くこと」が「声の主体から声を奪うこと」と表裏一体でありながら薄皮一枚で異なることへの気づきとその気づきを踏まえた思考の刷新へと、論点を絞り込んでいった。この論点への収斂は、コロナ禍により当初の方法での進行が阻まれたことを受け、隔週のラジオ番組の活用という、極めてハイペースの成果報告を続けた成果である。以上の探究の成果が、2024年2月24日に開催されたシンポジウム「声の気配(けはい)を聴く」に集約された。シンポジウムは、代表者と分担者全員の研究発表(越門勝彦「他者に代わって語ることの倫理と論理―証言についての哲学的分析」、間瀬幸江「パリの路上にいた女性たちの声―戯曲『シャイヨの狂女』の草稿分析」、國枝孝弘「フランス現代小説における戦争体験の語りと話者「私」の関係について」、安部芳絵「遊びとして押し寄せる子どもの声と生活世界―災害後の遊びを支える他者の気配」)と、コメンテイターによる4つの話題提供(栗原健・キリスト教学の視点から、永田千奈・フランス翻訳者の視点から、石井敏・建築計画学の視点から、菊池勇夫・日本近世史の視点から)によって編成され、聴講者から多くのコメントを得た。また、分担者の越門がスイスのヌーシャテルで開催された第39回フランス語圏国際哲学会で関連発表を行なったことも意義深い。以上の研究の成果を公刊する作業に2024年度を充てるため、1年間の期間延長を決めた。以上のことから、「やや遅れている」現状はかなりの可能性をもってリカバリー可能と考えている。なお、2023年度発刊予定だった同人誌「声のつながり2」は編集作業を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
公刊物「声の気配(けはい)を聴く」(仮)のために、シンポジウム「声の気配を聴く」での研究発表を論考等にまとめる作業が今後の研究の中心となる。また、特に間瀬幸江(代表者)と安部芳絵(分担者)の研究において引用されている基幹文献『心的外傷と回復』(ジュディス・L・ハーマン著)の理論を本研究課題により有機的に接続することを、宮城学院女子大学研究助成課題として別途立ち上げた。この科学研究費研究課題の後続課題の精査のための議論の場を兼ねるものとして、今年度中に1~2回研究会を実施する予定である。なお、「声のつながり2」の発行は、同研究助成課題の枠内で進める予定である。
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