研究課題/領域番号 |
20K00486
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
福田 裕大 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10734072)
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研究分担者 |
上尾 真道 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (00588048)
中筋 朋 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (70749986)
相澤 伸依 東京経済大学, 全学共通教育センター, 教授 (80580860)
野田 農 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20907092)
井上 卓也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (30916515)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ヴィリエ・ド・リラダン / 『未来のイブ』 / 19世紀フランス哲学 / 象徴主義 / 科学と哲学 / 身体 / 精神医学 / 『未来のイヴ』 / 十九世紀フランス哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
思想史研究において未開拓の領域である十九世紀のフランス哲学を再検討することが、この時代の文学研究に新たな展望を拓くものであることを実践的に示すため、以下の二点を目標としたケーススタディを行う。第一に、十九世紀フランス哲学の問題系のなかでも、とくに哲学と生理学の出会いを端緒として生じた「身体観の変容」に着目し、この変化の過程を歴史的に展望すること。第二に、ヴィリエ・ド・リラダンの長編小説『未来のイヴ』を精読し、同作のなかに描かれる身体観の揺らぎを同時代の思想的状況のもとで捉え直すこと。以上二点にかかる調査を、三年間のグループ研究を通じて実現していく。
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研究実績の概要 |
第三年次にあたる本年度は、前年度から進めてきた『未来のイヴ』再読のための論点整理の作業をもとにして、白水社の『ふらんす』誌上で半年にわたる雑誌連載の機会を持つことができた。さらには、この連載がインパクトとなり、同誌9月号において特集記事「21世紀に『未来のイヴ』を読む」を担当することができた。同特集においては、『未来のイヴ』の精読の結果得られた知見を、作品が書かれた同時代の文脈と、私たちの生きる現代の文脈双方と照らし合わせながら、同作の持つアクチュアリティを問い直す鼎談型記事を執筆したほか、同記事にて話題に上がった重要なトピックを二点の小論として論述した。 以上一連の成果公表をうけて、京都大学人文科学研究所の主催する公開シンポジウム「人文研アカデミー」の企画の一つに本研究班のメンバー三名が招待され、シンポジウム「ヴィリエ・ド・リラダンとフランス象徴主義──『残酷物語』と『未来のイヴ』が現代に語りかけてくるもの」においてコメンテーターを務めた。同シンポジウムは、水声社よりヴィリエの『残酷物語』の新訳を刊行した田上竜也氏、ならびに『未来のイヴ』の新訳を準備中の木元豊氏を講演者とするもので、本共同プロジェクトの研究成果はここでも十分な現代性を備えていることが確認された。 これらに加え、代表者である福田が、中国の南京大学より招待を受け、講演「フランスに見る黎明期の録音技術」を行ったほか、上尾真道による論考「フロイトのダイモーン」(上/下)が発表された。いずれのものも、19世紀後半のフランスで生じた哲学・科学的パラダイムの変容を捉えることを問題意識の一端に据えており、その意味で『未来のイヴ』に関する分析をなす際の基盤的知識になりうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの流行にともなう社会的不安の先行きを見通すことができず、上記の通り豊かな研究成果を得ながらも、それをより広く公表するための成果公表の機会を作ることができなかった。それにともない、研究期間を一年延長し、2023年度に最終的な成果報告を行うべく、もっか計画を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度になされた一連の研究成果がインパクトとなり、現時点ですでにふたつのプロジェクトが進行中で、これを遂行することをもって最終年度となる次年度の活動とする。第一に、京都大学人文科学研究所の主催するシンポジウムにて、本研究班のメンバーを登壇者としたシンポジウムが開催されることになっている(2023年12月予定)。第二に、本研究の成果をもとにした書籍の刊行を計画中である(制作のスケジュール上、書籍の刊行そのものは次年度以降に持ち越される可能性があるが、書籍の内容自体は2023年度中に取りまとめたい)。ここまで3年間の研究期間を経て、本共同研究の成果に対し、たんに学術研究の世界にとどまらない広い範囲からの期待が寄せられていることを確認できた。こうした期待に応じるべく、上記の書籍は学術的な質をもちろん維持しつつ、一般読者にもその意義を届けられるよう、さまざまな工夫を凝らしたものとしたい。あわせて、学術面でも実効的なフィードバックを得るために、第一のものとして挙げたシンポジウムを活用し、得られた意見を積極的に書籍の内容に取り込む予定である。
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