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ソ連の児童雑誌における「敵」表象のパラダイム

研究課題

研究課題/領域番号 20K00490
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02040:ヨーロッパ文学関連
研究機関千葉大学

研究代表者

大森 雅子  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90749152)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードソ連文化 / 児童雑誌 / 『まひわ』 / 敵表象 / ユング / ロシア文化 / 独ソ戦 / 児童文学 / 『ムルズィルカ』 / コルネイ・チュコフスキー / ミハイル・ゾーシチェンコ / ロシア文学 / メディア文化
研究開始時の研究の概要

本研究では、ソ連時代の児童雑誌を取り上げ、その中で表象された国内外の「敵」について、同時代の成人向け大衆雑誌や他のメディアを参照しつつ明らかにすることで、ソ連の児童雑誌における「敵」表象のパラダイムの構築とその再生産のメカニズムの解明を試みる。その際、ユング心理学の「影」の概念を援用することで、ロシア革命後からペレストロイカ期までに刊行された児童雑誌において、「公式的」な「敵」のイメージが、各時代の戦争や文化政策を契機として、どのようにイデオロギーの再生産に関わり、それらがどのように継承されていったか考察する。

研究実績の概要

本年度は、当初の研究期間を1年間延長して、前年度までの研究計画を一部変更して研究を行った。前年度末の時点では、冷戦期のソ連の児童雑誌における「敵」表象について分析する予定だったが、前年度まで通覧が難しかった1930年代の児童雑誌のデータベースが利用できるようになったため、本年度は、1930年代のソ連で刊行されていた児童雑誌『まひわ』("Чиж")における「敵」表象の分析を行った。
本年度は、ユングの「影」の心理学を援用しながら、ソ連の「敵」表象の特徴を分析することで、雑誌の編集部は、当時のソ連社会においてマージナルな存在であった幼少期の子供たちに対して、どのような方法で大人にとってのイデオロギー上の「敵」を自らの「敵」と認識させようとしていたか明らかにした。『まひわ』は、同時期の児童雑誌『ハリネズミ』と同様に、マルシャークやハルムス等の同時代の詩人による秀逸な詩が掲載されていた雑誌だが、『ハリネズミ』が1935年に廃刊した一方で、『まひわ』は1930年代ソ連の困難な時代を生き抜き、同時代の代表的な児童雑誌の『ムルズィルカ』と並んで、政治的なテーマを積極的に取り上げていた雑誌でもあった。こうした点を踏まえて、本研究では、特に1930年代後半の極東の国際情勢を反映した国外の「敵」表象の分析に焦点を絞り、『まひわ』の読者にとって地理的にも心理的にも遠い「敵」である日本兵がいかに表象されているかという点について、大人向けの同時代の雑誌と比較しながら、主にテクストの語りに着目して考察した。
以上の研究成果について、2024年2月3日に開催されたモスクワ大学ジャーナリズム学部主催の国際学会「2023年のジャーナリズム:創作・職業・産業」にオンラインで参加し、研究成果を報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度も、ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響で、当初予定していたロシアの図書館での資料収集を断念せざるをえなかった。また、2023年度は、本研究で利用していたソ連の児童雑誌のデータベースが予告なく一時的に閉鎖されるトラブルにも見舞われたが、『まひわ』の通覧が可能な他のデータベースを用いることで、当初の計画とは異なるものの、前年度までの研究内容を補完する作業を遂行することができた。また、モスクワ大学ジャーナリズム学部主催の国際学会にオンラインで参加することによって、ソ連文化やジャーナリズムの専門家から、理論的枠組みや先行研究に関して助言を得ることができた。
とはいえ、依然として主要な児童雑誌の多くは、オンライン上でソ連時代を網羅する形でのバックナンバーの通覧ができず、研究計画に遅延が生じているため、本研究課題の研究期間をさらに1年延長することとした。

今後の研究の推進方策

次年度も世界情勢を見極めながら、ロシアへの渡航が可能になれば、現地で資料収集を行う予定である。その一方で、本年度までの研究の遂行状況を踏まえると、次年度は研究計画を一部変更し、当初予定していた研究対象としての児童雑誌の数を大幅に減らす必要がある。
2024年度は、児童雑誌『ムルズィルカ』における「敵」の表象分析に改めて立ち返り、これまでの研究を総括すべく、同時期の児童雑誌や各種メディアとの比較分析を通して、1920年代から1940年代のソ連の児童雑誌における「敵」表象のパラダイムを時代ごとに整理し、「敵」表象の再生産のメカニズムを解明したいと考えている。そして、口頭発表や論文の形で研究成果の公表につなげたい。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Образ врага в советском детском иллюстрированном журнале "Мурзилка" 1940-х гг.(「1940年代ソ連の挿絵入り児童雑誌『ムルズィルカ』における敵の表象」)2023

    • 著者名/発表者名
      Омори Масако
    • 雑誌名

      Русское языкознание и литературоведение - 2022

      巻: 2022 ページ: 99-107

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Образ врага в советском детском иллюстрированном журнале "Мурзилка" 1940-х гг.2023

    • 著者名/発表者名
      ОМОРИ Масако
    • 雑誌名

      Русское языкознание и литературоведение 2022

      巻: -

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 『アサヒカイカン・コドモの本』における「サウエートの繪本」――1920-30年代ソ連の絵本の受容2022

    • 著者名/発表者名
      大森雅子
    • 雑誌名

      『EAA Booklet』

      巻: 27 ページ: 31-50

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] Образ врага в советском детском журнале "Чиж"(「ソ連の児童雑誌『まひわ』における敵の表象」)2024

    • 著者名/発表者名
      Омори Масако
    • 学会等名
      Журналистика в 2023 году: творчество, профессия, индустрия
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Образ врага в советском детском иллюстрированном журнале "Мурзилка" 1940-х гг.2022

    • 著者名/発表者名
      ОМОРИ Масако
    • 学会等名
      VI Международная научно-практическая конференция "Русское языкознание и литературоведение 2022"
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Образ врага в советском детском журнале "Мурзилка" 1920-х гг.2022

    • 著者名/発表者名
      ОМОРИ Масако
    • 学会等名
      Журналистика в 2021 году
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 『アサヒカイカン・コドモの本』における「サウエートの繪本」――1920-30年代ソ連の児童文学の受容2021

    • 著者名/発表者名
      大森雅子
    • 学会等名
      第6回ジャーナリズム学会/朝日会館子供企画研究会シンポジウム「朝日会館と〈コドモ〉文化(1926-1935)――メディア、家庭、社会教育」
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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