研究課題/領域番号 |
20K00503
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
御園 敬介 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (60586171)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | ポール=ロワイヤル / ジャンセニスム / ラシーヌ |
研究開始時の研究の概要 |
ポール=ロワイヤル修道院は、17世紀初頭の規律改革によりカトリック宗教改革の波に乗って多くの支持者を獲得し、フランス古典主義時代における知的・文化的・宗教的な発信源としてきわめて広範な影響力を誇った。やがて異端思想の牙城と見なされ王権の命で18世紀初頭に取り壊されるが、その記憶は新しい政治的文脈のなかで確固たる仕方で受け継がれた。本研究は、こうしたポール=ロワイヤルの歴史と記憶を辿る。
|
研究実績の概要 |
本研究は、フランス古典主義時代の知的・文化的・宗教的発信源として大きな影響力を誇ったポール=ロワイヤル修道院の歴史と記憶を辿るものである。令和四年度は計画の三年目であり、引き続きポール=ロワイヤル史にまつわる基礎資料の読解を進めつつ、「ポール=ロワイヤルの諸兄(Messieurs de Port-Royal)」と呼ばれた男性の同調者たちの動向を明らかにする研究に取り組んだ。より具体的には、以下の二点に多くの時間が費やされた。第一は、一六三〇年代に女子修道院の周囲に隠棲し最初の男性隠遁者集団を形成した弁護士アントワーヌ・ル・メートルと文法家クロード・ランスロの行動と論理を分析することである。それにより、特定の誓願や戒律に縛られることなく「砂漠の隠遁者」として共同生活を営んだ彼らの存在がポール=ロワイヤルの最大の特徴のひとつを形作っていることが理解された。また、「諸兄」への注目は、彼らが運営した私塾「小さな学校」の実態と変遷(パリ、ル・シェネ、レ・トルー、ポール=ロワイヤル・デ・シャンの諸校)を追跡する研究へとつながっていった。第二は、前年度に引き続いておこなわれたラシーヌ『ポール=ロワイヤル史概要』の翻訳と註解の作成である。本年度は、ラシーヌの典拠として浮かび上がってきたフランス国立古文書館所蔵の枢密顧問会議議事録およびポール=ロワイヤル図書館蔵「シルヴィ文書」所収の修道女たちの手記へのアクセスが可能になったことで、関連資料の訳出は完了した。またその全体にわたり詳細な註を付すとともに、ポール=ロワイヤル史に関する年表も作成した。解題の作成は途上にあり、来年度も継続しておこなう予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「ポール=ロワイヤルの諸兄」や「小さな学校」については日本でも入手可能な先行研究を渉猟することで一定の知見を得ることができたが、新型コロナウィルスの影響で今年度も渡仏計画を実行に移すことができなかったため、基礎資料の閲覧や各種文書館所蔵の手稿資料へのアクセスに大きな困難が生じ、関係各所への複写依頼にも相当の時間を要した。これにより、『ポール=ロワイヤル史概要』の注釈および解題の作成作業をはじめとして、研究全体に若干の遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きラシーヌ『ポール=ロワイヤル史概要』の翻訳と註解の作業を継続しつつ、ポール=ロワイヤルの共同体をより広い文化的背景のなかに位置づけるべく、修道女や隠修士たちのさらに外側に控えていた同調者の存在に焦点をあてる研究に取り組む。そのネットワークの発掘はポール=ロワイヤル研究において未開拓の領域であり困難が予想されるが、いくつかの個別事例から出発することで糸口が見えるかもしれない。研究の円滑な推進を実現するためには、休暇を利用してフランスの図書館や文書館で文献調査を実施することが必要になると思われる。
|