研究課題/領域番号 |
20K00514
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 武蔵野大学 (2021-2022) 小樽商科大学 (2020) |
研究代表者 |
Lee HyunJun 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (40708369)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | Miss Sai Shoki / ブロードウェイ劇場 / 92Y / Y.M.H.A. / New York / オリエント / Miller Theatre / Sai Shoki / 1930年代のアメリカのモダン・ダンス / 戦前の文化政策 / 戦前のニューヨークの舞踊界 / 「オリエント」 / 秋田と崔承喜 / 石井漠 / ブロードウェイ史 / Korean Dancer・SAI SHOKI / モダン・ダンス / マーサ・グラハム / 半島の舞姫(映画) / Sunami Soichi / シアトル写真クラブ / オリエント趣味 / 崔承喜 / 昭和期の大衆文化 / 朝鮮舞踊と朝鮮伝統文化 / 日本の文化政策と世界戦略 / 日朝の文化表象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「戦前欧米における崔承喜の世界公演戦略と日本の文化外交をめぐって」と題し、戦前日本で活躍した朝鮮の舞踊家崔承喜を取り上げる。崔承喜の舞踊芸術が欧米においてどのように表象されていたかを資料を通して実証研究を行うものである。それを通して当時崔承喜がどのような形で世界公演を展開していたかその全貌を明らかにしたうえ、1931年満州事変以降世界への日本文化発信に苦戦していた日本の文化政策の在り方を見直す。さらに本研究は当時欧米における東アジア文化がどのように披露されていたか具体的な劇場調査をはじめ、報道記事や興行用の写真、パンフレットなどの分析を通して明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、崔承喜の世界公演戦略や、戦前期の日本の文化外交をめぐって、以下のように研究を進めた。
まず、2022年3月に行ったアメリカのNYC及びWashington, D.C.でのフィールドワークで収集した様々な資料(新聞、雑誌、文献、写真、パンフレット)の解読を進めた。そして、実際崔承喜が公演をしていたと言われているブロードウェイの劇場を調査し、その内容の一部をまとめることができた。崔承喜はアメリカ公演のために、1937年12月渡米し、翌年1月にはサンフランシスコの日本領事館で第一回目の公演を行っている。この初海外公演の実現について、当時日本や朝鮮では、すでに賛否両論があった。今回のフィールドワークでは崔承喜の世界巡演が可能になった背景に、当時ニューヨークにあった興行社(Metropolitan, Hurokの2社)の積極的なサポートが、あったことが明らかになった。しかしそれだけでなく、日本の海外宣伝のための文化政策の一環として崔承喜の舞踊活動が推し進められていたことも、大きな後押しとなっていた。
一方で、1930年代における崔承喜や、日本の文化政策について報じている、アメリカのメディアを調べを進めた。上記ので述べたように、崔承喜の舞踊公演は、最初から激しい公演反対のボイコット運動に巻き込まれてしまったのである。しかし実際アメリカのメディアが「Sai Shoki」を報じる際に、崔承喜が帝国日本の文化の宣伝塔として活躍しているということ、そして朝鮮人としての崔の立場や危機感などについては、ほぼ関心を示していないことである。今回はその全貌とまで言えないが、アメリカのメディアで売り込もうとした崔承喜のイメージと日本の文化政策を進める政府側、そして廃れていく朝鮮の文化を継承しようとする舞踊家崔承喜、これら三者はそれぞれのズレは生じていたことが明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本来研究初年度に予定していた崔承喜のアメリカ公演の実態調査を行うことが出来たため、ほぼ順調に進めることが出来た。2022年3月に約2週間集めてきた資料を夏季夏休み期間に集中的に解読し、その一部を投稿することができたのが大きな成果である。コロナ感染症による渡航制限がある中行った、アメリカフィールドワークであったが、多くの第1次資料の発見や、所蔵席が把握でき、研究者として大きな成果があった。次年度もコロナ感染 に注意しながら、パンデミック時には後回しにせざるを得なかった海外フィールドワークを次年度も進める予定である。なので、次年度の研究計画もその通り進められと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は大きくフィールドワーク及び資料読解という2つの方向で進める予定である。 第一に、今年度は昨年に引き続き、アメリカで収集した資料を読み解く予定である。同時に今年の夏季休み中に、前回アメリカで全部調査できなかった部分(メトロポリタン美術およびMoMaのアーカイブ調査、議会図書館等)、またフランスに足を延ばし、フランス国立図書館および国立シャイヨー劇場にフィールドワークを行う予定である。この2022年3月に実行したアメリカ研究調査は、当時時間制限やコロナによる様々制限によって調査できなかったのを、今年の調査ではなるべく調べ上げる予定である。 第二に、現地のフィールドワーク準備やそれを実行しながら、2022年3月に行われたアメリカフィールドワークを通して集められた資料の解読を進める。この作業は主に冬季休みに集中して行う予定であう。つまり、次年度は、主に今年度収集した資料をはじめ、次年度に計画中の夏季出張時に集められた資料を、解読しまとめる計画である。そして、これらの成果は順次に所属学会誌や所属大学の紀要に論文の形として投稿する予定である。 今年度アメリカの新聞を調べる中で、偶然にも在米日系新聞、在米朝鮮系新聞という、新たな資料の何脈を見つけることが出来たのは、大きな成果である。これらの新聞に崔承喜や日本の文化政策についての報道の全様に関しては、徐々に解読を進め、今後論文としてまとめていく予定である。
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