研究課題/領域番号 |
20K00517
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
三原 芳秋 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (10323560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 〈はじまり〉の思想 / 惑星的危機と世俗批評 / 文学の潜勢力 / 人新世 / 『荒地』刊行百周年 / アーカイヴ調査 / 関係者への聴き取り / 研究者ネットワークの構築 / 〈宗教的なるもの〉 / 世俗批評 / 世俗世界性(worldliness) / 宗教的なるもの / エドワード・W・サイード / ポスト世俗 / 『異議申し立てとしての宗教』 / 文学理論 / 世界文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、サイードが本来「比較文学者」「文学理論家」であるという事実に立ち返り、その文学理論としての革新性と限界を(理論的かつ実証的な観点から)正確に見定めることによりサイードの〈遺産〉の核心に迫るとともに、サイードが提唱した「世俗批評」が「ポスト世俗」と呼ばれる現代にこそ(逆説的にも)批評的・思想的に有効な拠点となりうることを実践的に示すことを主眼とする。そこで鍵となるのが「世俗」と「世界」という二つの概念を内包するworldlinessというタームであるが、これを文学理論の文脈において精緻化し、ひいては人文社会科学一般が取り組むべき現代的課題に通用する概念にまで鍛え上げることが目指される。
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研究実績の概要 |
2022年度は、前年度秋に実施したコロンビア大学図書館所蔵Edward Said Papersのアーカイヴ調査で得た膨大な資料を整理しつつ、その成果を部分的に発表する場を積極的に設け、それらの機会に内外の研究者・有識者たちと意見交換を行って現在進行中の研究プロジェクトの学術的価値や位置づけを再確認する一年間となった。 まずは5月の日本英文学会第94回大会シンポジウム「文学の潜勢力-分節を問う、生成を辿る」に講師として招聘を受けた機会に、T. S. エリオット『荒地』出版百周年にからめて、コロンビア大学で収集した資料にも言及しながら初期サイードにかんする研究の新機軸を打ち出した。また11月には(一社)日本詩人クラブの招待で講演したが、それに先立って『現代詩手帖』10月号に関連する論考も発表している。これらも「『荒地』百年」を主題としたものだが、10月に翻訳出版したアミタヴ・ゴーシュ著『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』(以文社)と合わせて、気候変動によって惑星的な「荒地」が現出している今日におけるサイード的「世俗批評」のあり方を思考する機会となった(なお、同翻訳書には、前年度のニューヨーク出張の際に実施した著者インタヴューも含まれている)。ことに、これらの発表や出版が、大学の外で創作・批評活動を行っている方々と語り合う機会を生んだことの意義は大きかった。 「理論的」方面では、上記の発表・論文・翻訳の準備を通じて「文学(詩的なるもの)の潜勢力」や「人新世」といったより広い理論的視野から本研究課題の意義を問い直す機会を得たのにくわえ、前年度に『思想』に発表した論文「〈宗教的なるもの〉の異相」を韓国語に翻訳したいという提案を受け(2023年2月刊行)、翻訳者と密にやりとりするなかで「世俗批評」と「宗教的なるもの」との関係についての考察をさらに深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍が長引いたこともあり、コロンビア大学での追加調査その他、海外で予定していた作業は滞ったが、その分、上記のような国内での部分的研究成果発表にくわえ、最終年度の成果発表のための下準備がかなり進んだという面もあり、おおむね順調と評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、先延ばしになってきたコロンビア大学での追加調査(6月に予定)を実施する一方で、研究成果の発表を内外で積極的に行っていく予定である。まずは5月、国立台湾大学による招聘を受けて国際会議(“The Twenty-First Century: The New Contemporary?”)に参加する機会に、これまでの研究成果をふまえた本格的な発表を行い、世界各国から集まる文学・文化理論家たちとの討論に臨む(本会議の成果は、英語の学術批評ジャーナル『Ex-position』誌上で後日公開される予定である)。また、本年度後半には、岩波書店刊行の雑誌『思想』において「サイード没後20周年」特集号を企画しており、その特集の責任編集者として、また論考寄稿者として、現時点での研究成果を広く世に問うとともに、これを日本におけるサイード研究の新たなフェーズをむかえるための画期とする意気込みで準備中である。
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