研究課題/領域番号 |
20K00537
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 嘉彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (90012327)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 言語類型論 / 事態把握 / <ナル的>/<ナル的>言語 / 動詞<なる> / <推移>と<出現> / <スル的>/<ナル的>言語 |
研究開始時の研究の概要 |
一般に「ナル」相当の動詞の意味は<(Xカラ)Yガナル>(起点型:<出現>)と<(Xガ)Yニナル>(着点型:<推移>)に分化する傾向がある。アジアの言語では前者が優勢であるのに対し、日本語では既に上古の段階で、後者の型への強い傾斜が認められる(e.g. 前者では「春ガナル」、後者では「春ニナル」と言う)。今回は、日本語の「ナル」のこの点における特異な振る舞いに注目し、諸言語における「ナル」相当動詞の生態の確認に集中してみたい。<推移>は時間を含む概念であることを踏まえれば、これは、日本語話者の<体験的/臨場的>な事態把握への好み(前回科研費で提示のテーマ)に連なることが十分に予想できる。
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研究実績の概要 |
今回の科研費においても当初の計画として少なくとも年一度の海外出張によるインフォーマントとの対面調査、ないしは、関連国際学会での研究成果発表を予定していた。しかし、長引くコロナ禍のため、果たすことが出来なかったが、オンライン形式による国際シンポジウムの招待講演の機会があったので、海外での発表の機会は持つことができた。 他方、これまでの成果をまとめるという方向においては著しい展開があった。関連テーマでの共同研究を進めてきた科研費(代表:守屋三千代)グループと協力して、これまでの成果を確認する研究会をオンライン形式で数回実施(2022年3月、5月、9月、2023年3月(一部対面))し、その共同成果を守屋・池上(編集代表)『「ナル的表現」をめぐる通言語的(crosslinguistic)研究――認知言語学と哲学を視野に入れて』と題する編著として、40数名の寄稿者による400ページを超える大著として東京のひつじ書房より2023年晩夏には刊行の予定となり、そのための原稿整理、出版社への引き渡し等の作業を完了することが出来た。 この間の作業については、院生、ないしは、元院生レベルの若い人たちのアルバイトに負うところが多かったが、その謝金としては、海外出張費として未執行となっていた分のかなりな部分を転用することができたのが幸いであった。 私自身の科研費(20K00357)については、既に一年間延長の承諾が得られており、コロナ禍の緩和状況を視野に対面による研究者交流など、もっとも有意義な使途を見極めつつ、対応していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究グループの中心メンバー、そして、それに研究グループに常時属しているのではないが、研究経歴からして科研費による研究テーマに十分関心のあると思われる外部の研究者に特別に執筆を依頼するという形で進めた編著の刊行が視野に入るに至り、本研究の一つの重要な達成であることは間違いない。 しかし、研究費による研究で意図されている目標からいうと、これはまだ最初の一歩に過ぎない。次の段階として当然必要とされるのは、著書の中で各研究者によって展開されている考察をすりあわせてさらなる深みのある考察へと持っていくこと、そしてそのために、提示されている考察を相互に検討しあい、どのような、また、どの程度の共通認識が得られるかを直接論じ合うという機会の設定である。 コロナ禍の広がりがようやく収束に向かいそうな状況になってきたことから、これからはオンラインでなく、直接対面で詳細な検討が可能になる見込みが十分あるように思える。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象の諸概念や分析事項について研究者の相互理解を深め共通認識を築いていくことの重要性とともに、このアプローチには調査の対象とする言語の数と種類をさらに多くするという努力が欠かせないことも課題である。 比較的よく知られた言語の場合でも、例えば、アイルランド語、フィンランド語、タミル語などは、対象に加えることが望ましい言語であり、まだ手のついていないアフリカ大陸の諸言語、アメリカ大陸、オーストラリアの先住民の言語、あるいは少数の話者しかいない絶滅危惧言語などは、いくつかでも加えることが好ましい。研究の趣旨からして対象としたい言語は限りない。 実践の困難さは十分予測できるが、言語横断的な研究を目指すという趣旨からすれば、少しでも広範・多様な言語を調査対象とすることが望ましく、次年度はそれが少しでも実現するように進めたい。
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