研究課題/領域番号 |
20K00540
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丸尾 誠 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10303588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 中国語 / 結果補語 / 結果義 / 完了アスペクト / 中国語的な発想 |
研究開始時の研究の概要 |
各言語において、母語話者の認識・発想が色濃く反映された、その言語に特有の表現というのもが認められる。現代中国語における動補構造がその1つに該当し、統語的特徴から派生的な抽象義まで、その用法には中国語的な発想を随所に見出すことができる。本研究では、各種結果補語の横断的な用法分析を通して、中国語的な表現の生み出す発想の動機づけの解明を目指して、結果補語という1つの文法カテゴリーが中国語という孤立語であるが故に文脈依存の要素が大きい言語の文法的特徴の一端を担いうる意義について、実証的に検証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、結果補語の用法に反映された中国語的な発想を分析しつつ、その使用動機を解明することを主目的としている。今年度は結果補語“満”[いっぱいだ]の用法について、主に分析した。 “zhuo子上有一本書。”[机の上に1冊の本がある。]の“一本”[1冊]に見られるように、“L+V+O”の形(Lは場所を表す語句、Vは動詞、Oは目的語)で表される存在文では通常、統語的に目的語には数量詞が求められるものの、飽和状態での存在を表す“L+V満了+O”の形では結果補語“満”が分量を表しており、重複を避けるために、目的語に数量詞を用いることはできないとされている。例えば「籠の中いっぱいに卵が20個入っている」という状況を補語“満”を用いて“×籃子里装満了20个鶏蛋。”(宋文輝2007)とは表現できない。しかしながら“満”と数量詞が共起した実例は散見される。こうした表現が成立する動機づけの1つとして、Lの表す「定員」という概念を提示した。本内容については「存在を表す“L+V満了+O”形式について― Oと数量表現との共起という観点から―」というタイトルで研究発表を行った。 さらに“L+V満了+O”形式が表しているのは発話時の存在状態であるにもかかわらず、述語動詞フレーズが持続を表す助詞“着”ではなく、完了を表す助詞“了”を伴う動機づけについて、事態の推移という概念を提示した。本内容については「結果残存を表す“了”の用法 ―“V満了”の形を例として―」というタイトルで研究発表を行った。 こうした意味的・統語的制約を有する結果補語“満”を用いた存在表現を分析した上で、論文としてまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
語学論文の執筆にあたっては、収集した用例について、1つずつインフォーマントチェックを行う必要がある。従来は中国大陸に赴き、現地の研究者と討論・意見交換を行うといった作業が論文の作成に有益な効果をもたらしていたものの、コロナが蔓延してからは、渡航できない状況が続いている。本課題に取り組んで3年目になる2022年度でもやはり渡航はかなわなかったことが、研究の遂行にやや遅れが生じた要因の1つとなっている。また、職務上、本課題以外のテーマでの論文を年度内に執筆する必要が生じたことも、進捗状況に影響する結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集、分析、インフォーマントチェックという工程を繰り返しつつ理論構築をはかり、論文の執筆を進めるという方針に変わりはない。資料収集に関しても、従来通り、小説やインターネット上のコーパスを利用する。収集した例文は必ずしも規範的であるとは限らないので、取捨選択の判断や、その用例の表す意味・用法については、中国語母語話者の確認をとる作業が欠かせない。コロナが蔓延して以来、中国現地に出張に行けなくなってしまい、今後もまだ見通しが不明瞭である現状に鑑み、オンラインでの討論に加えて、周囲の中国人(大学院生)にも個別に必要に応じて作例を依頼する。
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