研究課題/領域番号 |
20K00545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
更科 慎一 山口大学, 大学院東アジア研究科, 准教授 (00379918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 入声 / 漢語音 / 百夷語 / 八百語 / 華夷訳語 / 高昌館訳語 / 来文 / 近代漢語 / 官話 / 対音資料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究においては、現代の中国の標準語の基盤とされている北京市の方言の発音が歴史的にいかに成立したかを言語学的に明らかにするため、古代中国語の「四声」(漢字ごとに決まっているアクセントの型)の一つである「入声」の変遷に焦点を当てる。研究の根拠とする資料は、入声が激しく変化する時期である元・明・清代の辞書・外国語との対訳文献、及び現代中国語の諸方言である。この研究によって、北京官話の成立にあたって他の地域の方言がどのように関与したのかといった、現在議論されている問題に対して、純粋に言語学的な観点から一つの解答が示されることが期待できる。
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研究実績の概要 |
2021年度においては、明代(1368-1644)に中国で作成された外国語教科書『華夷訳語』を資料として、漢語入声字の状況を考察した。中でも「乙種本」と称されるテキストに含まれた「来文」と呼ばれる外国語文例集において異国文字によって漢語音を表記した部分を分析の対象とした。2021年度に主に分析の対象としたテキストの言語は西番語、タイ諸語に属する3言語(百夷語、八百語、暹羅語)、及び緬甸語である。これらの言語はみなインド系のアルファベットで表記され、音韻体系を少しずつ異にしているため、同じ漢字音を表記するにしても、ちょうど同一人物の肖像を何人かの画家が同時に描いた時に画家によって像が少しずつ異なるのと同じように、少しずつ違った綴りによって表わされる。本研究においては、漢字を用いた非漢語音の表記(音訳漢字)と、その逆に異国文字を用いた漢語音表記の両者を整理し、その相互関係を明らかにすることを通じて、漢語音の入声の実態の把握を目指しているが、2021年度は主として後者に力を注いだと概括できる。 2021年度は、タイ諸語を扱った『華夷訳語』の「来文」に関する論文三篇を執筆した。第一は、百夷文字によって漢語音を表記した「百夷館来文」を整理し、背景にある漢語音韻体系を帰納した「『百夷館訳語』来文に見られる明代漢語の表音システムについて」であり、第二は、八百文字によって漢語音を表記した「八百館来文」を整理し、背景にある漢語音韻体系を帰納した「『八百館来文』に見られる八百文字表記漢語について」であり、第三は、「百夷館来文」のうち、泉井久之助氏の1949年の研究では取り上げられなかった部分に対する訳注を主な内容とする「ベルリン本『百夷館来文』に見える百夷語の資料について」である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度もコロナウイルス感染症のため海外出張が果たせず、中国や台湾に所在している資料を見ることができなかった。この点を重く見た場合は「やや遅れている」と評価すべきであろうが、代わりに国内出張によって東京・大阪・京都に所蔵されている資料を閲覧することができ、データを整理し、三篇の論文にまとめることができたので、おおむね順調に推移しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2022度は研究成果をまとめるため是非とも海外出張を果たしたい。それと同時に、資料の整理を完了させ、『華夷訳語』を中心とする明代漢語音資料を整理し、誰でも利用できるようなデータベースとして公開したい。そのために必要なことは、まず第一に華夷訳語乙種本に用いられた異国の文字について、それぞれの文字史上における位置づけと特異性を明らかにし、最良のローマ字転写方式を定めること、第二に華夷訳語乙種本が基礎を置いている漢語の音韻体系を再構成して適切な音韻記号によって示すこと、第三に資料中に出現するすべての漢字の中古音韻地位を附した上で配列して検索の便を図りつつ、それらがどの言語の『華夷訳語』のどこに出現したかがわかる索引を作成することである。
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