研究課題/領域番号 |
20K00557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山森 良枝 (松井良枝) 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70252814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 誤謬推論 / 擬似条件文 / 語用論的前提 / 接続法条件文 / common ground / 前提 / 話者の世界 / 量の原則 / 前件強化 / 文脈情報 / (誤謬)推論 / メタ意味論 / 変項表現 / 自由変項 / 二次元的解釈 |
研究開始時の研究の概要 |
意味論の定説では、意味の前提となる特定の対象や命題が文脈から補充される「変項」を含む<私/ここ>や時制、「too/も」などは、情報の補充がない場合、意味や真偽が不定になる。しかし、補充すべき情報がない文脈でこれらの形式が使用される事例は少なくない。関与的な文脈パラミタ―が明確に規定できない環境での文の理解は容易ではないにも拘らず、意味や指示対象が不定のまま会話を続けられるのはなぜなのだろう。本研究では、「適切な文脈の欠如=(現行文脈と話者の志向する文脈が二重写しになる)二次元的な文/発話の解釈枠組みの創出」というメタ意味論的視座から、「変項」表現の使用を可能にするストラテジーを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、条件文の形式を持ちながら、直接法条件文のように前件が後件の成立する世界を規定しないという意味で、明示的前提を欠く擬似条件文や反事実条件文を含む接続法条件文、誤謬推論の条件形式などの変則的な推論形式を対象に、その背後にある推論メカニズムの解明を目的とする。これまでの研究期間に、擬似条件文では、推論結果は後件ではなく、擬似条件文に必ず生起し真の値を取るとされる「許可の含意」であると見立て、後件の導入を最適化する役割を担う前件と、それに後続する後件とが協働して「許可の含意」の前提を提供していることを提案した。しかし、後件の推論結果が必ず偽になる誤謬推論に対しては、前件が後件の前提になるというこの図式は当てはまらない。そこで、誤謬推論の背景にどのようなメカニズが働いているのかを明示的に示すために、今年度は、前提とは文が適切に発話され得る文脈への制約であるという語用論的前提の概念を採用して、誤謬推論の意味の生成を可能にするメタ意味論的構造について考察した。まず、直接法条件文は前件Pと整合的な文脈(世界の集合:例えば現実世界)でのみ適切である。これに対して、接続法条件文は、前件Pを含まない世界(例えば、現実世界の一部)でのみ適切である。ところが、誤謬推論の前件Pは現実世界において偽となる命題ではない。そのため、誤謬推論にはP以外の隠れた前提Xがあると考えなくてはならない。このことから、①誤謬推論は、P世界を含まないが、X世界を含む文脈(現実世界の外にある世界の集合)においてのみ適切に処理されること、②このような背景となる世界の構造を措定すると、なぜ誤謬推論では、Pが充たされる現実世界が非関与的であるのか、そして、その結果として、暗に、Xが充たされる文脈へのシフトを促す読みが生じるのか、について説明が可能になること、③ ②は①の分析の妥当性の傍証でもあること、を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度までに得た研究成果を土台に、接続法条件文との比較から、誤謬推論の意味の背景にある論理構造を明確に捉えることができたと考えられる。ただ、誤謬推論にはストローマン論法や下り坂論法、さらには、ドミノ理論など、多種多様な論法が含まれており、誤謬推論の背後にある論理構造の解明には至ったものの、個々の論法の仕組みの解明にまでは至っていない。これは今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
誤謬推論にはストローマン論法や下り坂論法、さらに、ドミノ理論などの多種多様な論法が含まれる。個々の論法には固有の読みがあり、そのメカニズムの解明は容易ではない。ただ、どの論法も、後件の前提となる関与的な文脈(世界の集合)を現実世界以外の世界にシフトする、という共通点を持つ。従って、今後は、この共通点を足がかりに、世界のシフトの方略の違いに注目して分析を進める予定である。
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