研究課題/領域番号 |
20K00564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山村 崇斗 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30706940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 分離等位接続主語 / 不連続等位構造 / 史的統語論 / 生成統語論 / 位相 / 付加詞条件 / 単一事象条件 / 古英語 / 中英語 / 初期近代英語 / 後期近代英語 / 言語変化 / 言語変異 / 等位構造 / 不連続構造 |
研究開始時の研究の概要 |
等位接続詞が2つの要素を結び付けるとき、それらの要素は等位接続詞を挟んで両側に現れることが当然のように思われるが、歴史的英語や英語以外の言語を見てみると、第二要素が等位接続詞を伴って第一要素から離れて句や節の末尾に現れる現象が観察される。そのような本来あるべき位置から離れて語句が現れたとき、人間の言語能力がこれをどのように算出し、また処理するのか、という疑問に対して、言語理論のひとつである生成文法に基づいて科学的な答えを得ることが、本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
等位接続されたふたつの名詞句のうちの一方がひとつの文の中でもう一方から離れた位置に現れる現象は、現代英語では許されないが、昔の英語のテクスト、特に古英語のテクストから多く観察されていたことが注目され、この現象が英語史のどこかの段階で消失したとこれまで議論されてきた。昨年度までは古英語から後期近代英語までのテクストを史的電子コーパスを用いて調査し得られたデータを、令和5年度は当該構文を含む史的テクストを時代の下位区分(古英語期(前期・後期)、中英語期(1~4期)、初期近代英語期(1~3期)、後期近代英語期)毎にどのように分布していたかについて改めて調査した。当該構文が消失した時期については様々に先行研究で論じられているが、コーパス調査によって早ければ中英語期4期、遅くとも初期近代英語期1期には、ほぼ消失していたと結論づけられた。この調査の結果の一部と統語分析の可能性は第9回史的英語学研究会で口頭発表され、その発展物がTsukuba English Studies 42で研究論文として掲載されている。そこでは、昔の英語の等位構造の統語構造が第一等位項に等位接続詞付きの第二等位項が付加する「付加詞分析」で構築されていたため、ある程度の着脱可能性が認められていたと考える一方、初期近代英語期前後以降の等位構造では、等位接続詞が主要部である句の指定部に第一等位項が生成される「指定部分析」に変わったため着脱しがたくなったと論じた。このことは別の課題(23K00494)が取り扱う「関係節の被修飾語からの分離現象」の分布の変遷と比べることで明確になることも指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた現代英語も含めた事例調査には至らなかったが、後期近代英語期までの史的電子コーパス調査を完了し、分離等位接続主語の構文の消失時期をおおよそ突き止めることができた。また当該構文の有無やその他名詞句内要素の分離の有無がDP言語とNP言語の違いに還元されるというOda (2017 et seq.)の指摘から、等位接続構造に限定されない名詞句の分離全般の史的研究への発展が見込まれるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
助動詞を含む主節(または従属節)に限定し、等位接続主語だけでなく等位接続目的語などにも範囲を広げて、分離等位構造の分布を推定する予定である。それに伴いDP言語とNP言語の違いに着目した統語分析も検討しているところである。
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