研究課題/領域番号 |
20K00566
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
秋廣 尚恵 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60724862)
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研究分担者 |
川口 裕司 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20204703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | フランス語話しことば / 談話標識 / 言語変異 / 用法拡大 / 中間言語 / 現代話しことばコーパス / ミクロ通時論 / 通時論 / 地域的変異 / 地域フランス語 / 現代フランス語話し言葉 / 通時的変異体 / 地理的変異体 / 文体的変異体 |
研究開始時の研究の概要 |
様々な話し言葉コーパスや言語地理図などのリソースを利用し、質的に分類したサンプルコーパスを作成し、その中でどのように談話標識が現れるかを比較しながら記述する。談話標識の用法分類は、手動でタグ付けをしながら行い、分類結果は、自動タグ付けを可能にするための基礎データとしても蓄積する。 談話標識の用法分類の一覧と頻度数をサンプルコーパスごとに作成し比較することで、フランス語話し言葉の多様な実態を談話構造の観点から浮彫りにする。また、談話標識の現れる要因やコンテクストを実際の言語使用の面から明らかにし、フランス語教育や自動言語処理などの学際的な応用分野の研究者にとっても参照しやすい形に整備して公開する。
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研究実績の概要 |
研究代表者の秋廣尚恵は、引き続き、フランス語ネイティブ話者の使用する談話標識について、通時的変異と文体的変異の両面から、記述的研究を進めた。とりわけ、今年度は「限界」を意味する limite という名詞を取り上げ、その用法の拡大が進み、2000年代以降、インフォーマルなフランス語の話し言葉において談話標識として用いられるようになった点について焦点を当てて研究した。研究にあたり、Jeanne-Marie Debeisieux パリ第3大学教授のアドバイスを受けた。東京外国語大学の収集した話し言葉コーパス、及び、オンラインで公開されている「現代フランス語参照コーパス」、さらに「オルレアン社会言語学的研究コーパス」を用いつつ、limite の談話標識化と、そのことにより、従来から存在するイディオムである a la limite との競合関係が生じている点について、2023年1月にオルレアン大学で行われた国際学会「パロールは何を表すか?」において発表を行った。 研究分担者の川口裕司は、博士課程の大学院生と共に、引き続き学習者の話し言葉コーパスにおける談話標識の中間言語的変異の研究を進めた。具体的には、ben と bon という2つの談話標識について比較しつつ、記述的研究を行い、その成果を2022年12月に国際学習者音韻学会にて発表した。 また、今年度、さらに話し言葉コーパスの拡充を進めるため、東京外国語大学にフランス語圏から留学してきている学生10名をインフォーマントとして、自由会話を5時間ほど録音した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の秋廣尚恵の健康上の理由で休職、就業制限がかかってしまったこと、また、新型コロナウイルス感染拡大の継続とウクライナ情勢の勃発なども重なり、ヨーロッパとの行き来が物理的に難しく、とりわけ、現地での文献、インフォーマント調査が不可能になってしまった。さらに、現地から研究者を招待することも同様に極めて難しかったことから予定されていた研究交流もオンラインやメールでのやりとりに限られてしまった。以以上の理由から、予定していた研究成果が十分に得られなかった。 しかしながら、日本で10名の留学生の協力を得て、5時間ほどのコーパスの収集やインフォーマント調査ができたことで、コーパスの拡充については、十分とはいえないまでも、進めることができた。また、研究代表者、研究分担者ともに、これまでに積み重ねてきたデータを利用して、それぞれの研究課題の研究を進め、その成果を学会発表(秋廣については、就業制限により出張不可であったため、オンラインで学会に参加し発表)することができた。 また、予算を文献の購入に充てることで、先行研究を十分に吟味し、理論的研究を進める基盤をなすことができた。 以上の理由から、研究の遅延は深刻なものではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の秋廣尚恵の就労制限が解除となり、状況が可能であれば、海外調査に出かけ、現地にて、フランス語の話し言葉を20時間から30時間ほど収録したいと考えている。さらに、これまでのデータの整備と、今年度収集したコーパスの転写とアノテーション作業を完了する。また、海外からの研究者の招聘も検討する。 さらに、秋廣尚恵は、limite をはじめとする様々な「近似的標識」が談話標識化する語彙を集め、語彙の違いが談話標識化の違いにどのように影響を与えているのかを研究する。分担者の川口裕司は、引き続き、談話標識の地理的変異体、学習者の中間言語による変異体の研究を進める。 最終年度となるので、研究成果を国内学会、国際学会での発表、論文の形で積極的に発信する。そのための校閲代、旅費などに残された予算を使用する。
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