研究課題/領域番号 |
20K00572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井口 容子 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00211714)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 受動的代名動詞 / 総称性 / モダリティ / フランス語 / 中間構文 / 代名動詞 / 中動態 / 再帰 / 譲渡不可能所有 / 与格 / ロシア語 / 叙述の類型 / 非対格性 |
研究開始時の研究の概要 |
フランス語の代名動詞は、ドイツ語の再帰動詞などと同様、ヴォイスの範疇である「中動態」を形成するものと考えられている。本研究においては、受動的用法を中心に、フランス語の代名動詞の機能拡張を分析する。理論的には、「総称性」、「叙述の類型」、「モダリティ」、「非対格性」の4点に特に注目しながら、統語・意味の両面から考察を重ね、代名動詞が持つさまざまな機能の間のネットワークを明らかにしていくことをめざす。
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研究実績の概要 |
フランス語の受動的代名動詞は、総称性、モダリティ、叙述の類型など、さまざまな観点からみて興味深い構文であるといえる。2022年度は特に総称性とモダリティに注目して研究を行った。まずMari(2011), Menendez-Benito(2013), Boneh(2016)等の文献を精読し、総称性に関する考察を深めた。その上でLekakou(2005, 2008)における中間構文の分析を批判的に検討し、その利点と問題点を示した。 Lekakou(2005, 2008)は習慣的総称(habitual generic)と傾向的総称(dispositional generic)の二つを区別し、中間構文が表す総称性は傾向的総称であるとする。そして中間構文の意味構造は、力動的モダリティ(dynamic modals)のひとつであるdispositional willの構文についてBrennan(1993)が示したものに近いと考えている。 Lekakouの主張は、中間構文の持つ可能のモダリティを考える上で興味深い示唆を与えるものであり、「自発」から「受動」へという中動態の機能拡張の観点から考えても一定の妥当性を持つものであると考えられる。しかしながら他方において、フランス語の受動的代名動詞には、主語以外の要素に「傾向付与」を行う事例が存在することから、このままでは問題を含むものであるということを示した。 この研究の成果は、2022年12月10日に水産大学校を主催校として行われた日本フランス語フランス文学会中国・四国支部大会において口頭発表を行い、機関誌である『フランス文学』第34号に「フランス語の受動的代名動詞と総称性」というタイトルで論文が掲載されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は「研究実績の概要」欄に記したように、おおむね順調に総称性およびモダリティの考察を進めることができた。だが2021年度まではコロナ禍の影響や、学会関連の仕事など他の業務が多忙であったため、遅れが生じており、形式意味論的分析がまだ十分には行えていない。そのため上記の判断になった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も引き続き、受動的代名動詞の総称性とモダリティに注目して研究を行う。これまで行ってきた考察を基に、形式意味論的にどのような形で記述するのが妥当であるのか考えていく。統語的な側面も考慮しながら、分析を進めていく。 また、この問題は「属性叙述/事象叙述」を区別する「叙述の類型」(益岡2008, 影山2012等)とも緊密に関係するものである。この観点からも考察を行う。
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