研究課題/領域番号 |
20K00574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
渡辺 真澄 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (60285971)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 動詞 / 活用 / 意味 / 音韻 / 一貫性 / 単一機構仮説 / 二重機構仮説 / 動詞活用 / 2重機構仮説 / 意味記憶 / 膠着語 / 規則性 / 語幹変化 |
研究開始時の研究の概要 |
動詞活用に関しては、2つのメカニズムが提案され、両者の間で熾烈な論争が繰り広げられてきたが、多くは活用が単純な英語を対象とした研究である。日本語に関しては健常者のみならず失語症例の研究もきわめて少ない。本研究では、膠着語(動詞の後ろに色々な要素を付着させていく言語)である日本語の複雑な動詞活用が、規則ではなく、音韻/意味情報に基づきなされるとの視点から検討する。複雑な活用パタンをもつ日本語に関する本研究は、異言語間研究を視野に入れ、動詞活用メカニズムを多角的に検討することができる。脳損傷例も対象にするため、脳機能研究への橋渡しが可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究では、防音室の中で長時間、対面で実験を行う。前年度はコロナ感染の観点から実験を中止せざるを得なかったが、研究の枠組みを見直す良い機会にはなった。今年度はコロナ感染が一段落したので実験を再開した。 まず、動詞活用に影響を及ぼす要因と思われる、①動詞活用の「一貫性」、②「タイプ頻度」(活用型別の動詞数)、③活用時のアクセント変化の影響、を検討した。その結果、①語尾が「る」で終わる動詞は過去形が4通りと一貫せず(切る→切った、着る→着た、来る→来た、する→した)、「る」以外で終わる一貫動詞(例、試す→試した、遊ぶ→遊んだ)より活用が遅い「一貫性効果」が、②タイプ頻度の高い動詞つまり同じ活用をする動詞数が多いと、少ない動詞より活用が早い「タイプ頻度効果」が、そして③基本形と過去形でアクセント核が移動する動詞は、移動しない動詞より活用が遅い「アクセント効果」があることを見出した。 上記の実験は、現在形を過去形に変換する課題であるが、私たちが過去の出来事、例えば「昨日、寿司を食べた」と言う時に、一旦「食べる」を想起し、その上で「食べた」と言い換えてはいないだろう。過去か未来の出来事だとの意味情報から過去形や現在形を言うように思える。そこで意味から動詞を言わせる課題を考えた。日本語には漢字があるから動詞の漢字だけで動詞を推測できる。それに基づき過去形や現在形を言わせた。実験の結果、一貫性効果は消えた。これらの結果は、学習により成立した意味と音韻情報の相互作用により過去形が生成されるとする単一機構仮説での説明は可能だが、現在形から過去形が作られるとする伝統的な言語観(二重機構仮説)では説明困難である。 動詞活用には意味が重要と考え、意味記憶検査を作っている。令和3年度には若年健常者の、今年度は老年健常者のデータを収集できた。今後、失語症例や意味認知症例の意味能力を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度まで、新型コロナウィルス感染防止の観点から、防音室で実験者と実験協力者が同席し、発話する課題を行う動詞活用実験、および高齢者を対象とした対面での意味記憶検査を行うことは不可能であった。令和5年度にようやく実施でき、成果を学会発表するに至ったが、申請時の研究全体の計画からは遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度までに行った動詞活用実験では、実験協力者の人数各20名と、十分とは言えないため、追加実験を行いたい。
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