研究課題/領域番号 |
20K00575
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
木口 寛久 宮城学院女子大学, 一般教育部, 准教授 (40367454)
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研究分担者 |
高橋 将一 青山学院大学, 文学部, 教授 (70547835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 統語論 / 第一言語獲得 / 国際共同研究 / 言語理論 |
研究開始時の研究の概要 |
生成文法では、文法構造が下から上に積みあがって(ボトムアップに)形成されると仮定されているが、その一方で、このようなボトムアップ・アプローチに与しない、いわば“割り込み”操作(代表的なものとして遅延併合があげられる)が数々提案されている。そこで、本研究では、件の“割り込み”操作を要求する構文の理論的研究を行いつつ、それらを用いた第一言語獲得実験を計画し、これらの統語操作の生得性の調査も試みる。これにより、「文法構造の形成には厳密なボトムアップの積み上げだけではなく“割り込み”も許容されなければならない」と主張することが本研究のねらいである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、具体的な研究テーマである三項動詞の2つの目的語の数量詞繰り上げにおける(非)循環性の理論的・実証的研究について、これまでに入手済みの実験データの分析を継続しつつ、論文執筆作業に取り組んだ。とくにこれに直接関連する先行研究の精査に取りくみ、上述のデータとその分析が言語獲得理論のなかで以下のように位置づけられるとの考察に至った。 英語母語話者の幼児の文法においてもspray-load交替においてscope-freezingを大人のそれと同様のふるまいを起こすという本研究で得られた知見はGoldberg(1990)に代表されるUsed-baseアプローチによる第一言語獲得論には全く相容れない。さらにMusolino(1998)にて提唱された幼児は数量詞の解釈を表層の構造関係でのみ判断するとするいわゆるIsomophismの考えに対し、spray-load交替におけるonto-variantで幼児も大人同様に表層構造と逆の作用域を許すことを観察した本研究データの分析はこの主張の実証的な反例となる。一方、spray-load交替においてwith-variantがscope-freezingを幼児も遵守するというデータは、この現象を派生において非循環性を許容したtuck-in操作にて説明したBruening(1999)の分析が正しいとすれば、文法構造の派生において非循環性を要求する統語操作の理論的正当性を第一言語獲得論の観点から支持する強い証拠となりうる。 本年度は海外研究協力者とこれらの点についてディスカッションを重ねながら論文の執筆にとりかかった。現在イントロダクションの草稿を書き上げ、なお本論の執筆作業中である。 また、これまでの本研究で得られた成果などももとに『言語理論・言語獲得理論から見たキータームと名著解題』(開拓社)の「再構成効果」の分担執筆を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の主たる研究トピックとなった三項動詞の2つの目的語の数量詞繰り上げにおける(非)循環性についての理論的・実証的研究において、2022年度も前年より継続する新型コロナウィルス感染症拡大防止措置に伴い、共同研究打ち合わせに滞りが生じた。さらに海外研究協力者の家庭の事情により論文執筆の共同作業を中断する時期があり、達成度の観点からは、やや遅れているという判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
三項動詞の2つの目的語の数量詞繰り上げにおける(非)循環性についての理論的・実証的研究においては、引き続きspray-load交替のついて特化して、これまでの当該研究テーマに関する先行研究を詳細かつ広範に調査する。もちろん海外研究協力者との共同研究打ち合わせも精力的に継続しながら、本年度中には得られている実証研究結果が第一言語獲得論においていかなる示唆を与えるかについて結論付ける。そして、得られた考察をまとめて年度内に1本の論文とし、国際学術雑誌への投稿を目指す。さらにWhole Sale Late Mergerに関する統語モデルの進展にも努めていきたい。
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