研究課題/領域番号 |
20K00577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
FAN SauKuen 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (70327188)
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研究分担者 |
村岡 英裕 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 名誉教授 (30271034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 精神医学分野の方法論と応用の可能性 / 多職種連携によるサポート体制 / 外国人就労者の言語行動の軌跡 / 周移住期の概念構築 / 言語管理とホスト社会での承認 / 言語生活調査 / オンライン会話 / 自己呈示 / 多文化社会 / 言語環境 / 言語問題 / 外国人支援 / ミクロ社会言語学 |
研究開始時の研究の概要 |
従来から中長期滞在の目的で来日する外国人就労者を対象に多くの組織的・非組織的な支援体制が工夫され、実施されてきた。本研究では、まず支援の受益者となることが予想される外国人本人の言語行動の軌跡を軸にしながら、来日が決定となってから来日90日を越えて中長期滞在になるまでの期間を1つの決定的な連続体として捉え直す。そして、ミクロ社会言語学の角度から、来日前と来日後という分断した従来の視点では見出しにくい外国人就労者の言語環境が激変する場合の言語問題を探り、多様な言語話者が関わりうる外国人支援の在り方に新たな視点を提供する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は外国人就労者へのサポート体制の可能性を考えるために、外国人来日前と来日後の支援組織に分けて以下の調査を実施した。 (1)オーストラリア調査:在籍者数4万人以上の大学(2校)のキャリアサポート部門の担当者に対して、日本での就労に関する情報をどのように提供し、相談に対応しているかを中心に現地でインタビューを行い、施設とオンラインシステムを見学した。また、一般のオーストラリア人向けに事業を展開している国際交流基金シドニー日本文化センターを訪問し、オーストラリア人が日本で就労するきっかけを直接的・間接的に作る体制を調査した。 (2)北海道調査:当初企画した通りに、ベトナム出身の技能実習生を受け入れる北海道の水産加工会社を対象にインタビュー調査を行った。同時に、多職種連携による支援体制作りの観点を加えて、企業の技能実習生の受け入れを支援する市役所と同市の商工会議所の職員にもインタビュー調査を行い、技能実習生来日後の支援の実態と問題点に関するデータを収集した。 研究発表としては、オーストラリアのMonash Universityで「Constructing a new language environment in Japan among migrants: Some theoretical considerations for language management studies」というテーマで招待講演を行った(2023年8月29日)。また、上記調査(2)のデータの分析については、日本言語政策学会第26回研究大会(2024年6月9日於京都大学)の口頭発表に採用されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究期間の4年目にあたる令和5年度になってからようやく本格的な実地調査を行うことができるようになった。夏のオーストラリア調査と冬の北海道調査を通して、送り出し機関(国外)と受け入れ機関(国内)における外国人就労者への支援体制の事例を収集することができた。一方で、技能実習生に対する体系的な調査にあてる時間の確保ができなかったため、延長となった最終年度(令和6年度)に行うこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる令和6年度では2つの推進方策を考えている。 1つはこれまで実施できなかった技能実習生側に対して調査を行うことである。調査の方法については、従来の言語バイオグラフィー研究とエスノグラフィー研究に加えて、精神医学分野の方法論を試みる。その準備として、周産期メンタルケアの専門家を招いて講演会を開き、新しい知見を得る。同時に、研究代表者と共同研究者とのパネルディスカッションを通して外国人就労者の言語問題の研究との接点を見出す。このような手法に基づいた調査から、技能実習生の言語環境と言語使用の実態と変化に関するデータを入手したあと、令和5年度収集した支援側の事例と照らし合わせ、周移住期の概念の有効性を検討し、外国人就労者への支援策に対して必要な多職種支援のあり方を提言することを目指す。なお、技能実習生と対照させるために、「技術・人文知識・国際業務」の資格で来日した外国人英語教師にも調査を行う計画があったが、令和6年度は最終年度であるために調査の規模を縮小してデータ分析に専念する。 2つ目は研究の成果をまとめることである。本研究は、外国人就労者の言語使用に関して来日前と来日後をまったく別な事象としてとらえてきた従来の視点を補完するため、その前後での言語環境の激変と、それにともなって生じる就労者の言語問題に焦点を当て、多様な言語話者が関わりうる会社組織・地域社会の外国人支援の在り方に新たな視点を提供するという目的を達成するために、以下の3つの形態で成果を発表することを計画している。(1)6月の日本言語政策学会の年次大会における口頭発表、(2)12月の韓国言語研究学会と韓国現代言語学会の合同学術大会における口頭発表、(3)大学の紀要または日本言語政策学会学会誌への論文投稿。
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