研究課題/領域番号 |
20K00579
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (90711135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 敬語の変化 / 韓国語の敬語 / hao体 / hayyo体 / 敬語の過剰使用 / 聞き手敬語 / 尊敬語 / 談話効果 / 日韓対照 / 敬語史 / 無尊敬 / 過剰尊敬 |
研究開始時の研究の概要 |
近年日韓語では,上位者に対する一連の会話で「無尊敬」「尊敬」「過剰尊敬」の3つのレベルが混用されることがある。本研究では,話し手が尊敬語を用いて高めるべき相手に対して敬意を一定に維持せず「無尊敬」や「過剰尊敬」の形式を用いる理由を明らかにする。ドラマ・映画と生放送の談話をデータとし,話し手と相手の関係性,発話内容,使用される文法形式によって「無尊敬」や「過剰尊敬」の現れ方がどのように変わり,また両形式を用いることでどのような談話効果が得られるかを分析する。またよく現れる「尊敬→無尊敬」のパターンと「尊敬→過剰尊敬」のパターンを母語話者に聞かせ,年齢や性別によって許容度に違いがあるかを調べる。
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研究実績の概要 |
本研究では、対人関係の捉え方の変化により,敬語の使用様相がどのように変化するかを明らかにする。研究3年目には、1950~1960年代における韓国映画の台詞を分析した2021年に続き、1970~1990年代における韓国映画(12編)の台詞を分析し、論文にまとめた。分析の結果、先行研究の指摘通り、非格式体の使用率は徐々に増加し、格式体の使用率は徐々に減少していくことが確認された。そのうち、丁寧体でありながら上位者には使えないhao体は、1990年代半ばになって使用率が著しく減少したことが明らかになった。また、hao体をhao形とhau形に分けて分析した結果、主に女性話者によって使われるとされるhau形が1970~1990年代には男性話者によっても使われていることが分かった。次に,1950~1960年代の映画で上位者が下位者に対して情感的な態度を表す時にhayyo体が使われる例が見られたが、1970~1980年代にはそれ以外に相手を責めたり、嫌味を言ったりする時にもhayyo体が使われていた。相手を責めたり、嫌味を言ったりする時にhayyo体を使うのは現在でも見られ、このようなhayyo体の使い方は1970年代以降から見られたと考えられる。また2022年度には、日本語と韓国語の対照研究を目的として、1950~1990年代における日本映画の台詞の文字化作業を始め、すでに一部終了している。最後に、韓国のショッピング番組の文字化作業も始めた。生放送の番組をデータとしているため、近年問題となっている尊敬形‘-si-’の過剰使用も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、1990年代と2000年代の映画を比較・分析する予定だったが、途中で計画を変更し、1950~1980年代の映画も分析することにした。なぜならば1950年代は朝鮮戦争などにより社会的変化が著しかったため、それが対人関係の捉え方や敬語の使い方に影響を与えた可能性があると考えたためである。1950~1980年代のデータを分析した結果、予想通り1990年代のデータでは見られなかった敬語の使い方が見られた。韓国映画の文字化作業はすべて終了しており、日本映画の文字化作業も一部終了している。また、ショッピング番組の文字化作業も始めており、作業が終わったデータから分析を始めている。データとする映画の数を増やしたため、その作業や分析に時間がかかり、その後に予定していたショッピング番組の文字化作業も遅れている。2023年度には日本映画の文字化作業と日韓のショッピング番組の文字化作業を終了させ、分析・考察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
日本映画の文字化作業と日韓のショッピング番組の文字化作業をしてくれる協力者を募集し、文字化作業に取り掛かってもらう予定である。文字化作業が終わったものからラベリングと分析を行う。対人関係の捉え方と敬語の使い方の変化に注目し、日本と韓国における変化をそれぞれ分析した後、日韓対照を行う。また、朝鮮時代に日本人が朝鮮語を勉強する時に使われた『交隣須知』と、朝鮮人が日本語を勉強する時に使われた『捷解新語』に関する先行研究を通して、その時代の敬語がどのように使われていたのかも分析したいと考えている。
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