研究課題/領域番号 |
20K00597
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 佛教大学 (2021-2023) 筑波大学 (2020) |
研究代表者 |
池田 晋 佛教大学, 文学部, 准教授 (40568680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 重動句 / 主題 / 繰り返し表現 / 様態補語 / 構文 / 中国語 / コピー型主題 / とりたて / 対照研究 |
研究開始時の研究の概要 |
中国語の主題は「アーギュメント主題」「ドメイン主題」「コピー型主題」「節型主題」の4つに分類できるとされるが、このうちコピー型主題に対する研究は他の3種に比べ大きく立ち遅れていた。本研究はこのコピー型主題に着目し、これらが「取り立て」機能に深く関与しているという作業仮説を出発点として、代表的な成員の用法の記述を進め、コピー型主題の体系と他の主題との関連性を具体的に描き出そうとするものである。コピー型主題に「取り立て」という観点を組み込もうとする試みは本研究の独創的な着想であり、中国語の主題体系の全容解明や、取り立て研究の更なる発展に資するものであると考えられる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、継続課題である「重動句」(“他説英文説得非常流利。”のようなVの繰り返しを伴う文)の調査、分析を更に推し進めた。当該構文に関しては、国内外の学界で豊富な先行研究の蓄積があるにもかかわらず、最も基本的な問題である構文の内部構造がどうなっているかという点について、未だに学界内で意見の一致が見られていない。そこで、まず構文の内部構造に関する先行研究の整理とそれらに対する批判的検討をおこなった。その結果、多種多様な下位タイプを持つ重動句を、内部均質的なものと捉え、全てを1つの構造の下で説明しようとしていたところに先行研究の問題があるとの考えに至った。実際は、趙林暁(2023)などの最新の研究が指摘するように、重動句もタイプが異なれば、その発生源や内部構造が異なっている可能性がある。このことを承けて、研究代表者は、重動句の中でも“得”様態補語を伴うタイプの重動句(“VOV得C”)を対象とし、その内部構造の実像を明らかにすべく、コーパスに基づく用例調査と分析をおこなった。本年度の分析を通して明らかになった点としては、(i)“VOV得C”は周知の如く大きく2つの下位タイプに分かれるが、タイプによって構造が異なっていること、(ii)近年の研究ではこの構文のVOを「(コピー型)主題」と見なす説が主張されており、学界内で有力視されつつあるが、実際は必ずしも常に主題と分析できるとは限らないこと――つまり“VOV得C”を題述文と見なすことは妥当ではないこと、の2点が挙げられる。なお、本年度の調査と分析の成果は、年度中に2度にわたって研究会報告をおこない、国内の研究者から有益な助言を受けることができた。必要な修正をおこなった上で、令和6年度中には学術論文としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題開始から最初の2年間は新型コロナウイルスの対応や本務校の異動などの影響で本課題以外の面に多く時間を費やさなければならなかった。また最初に取り組む予定であった重動句の研究が予想以上に難航し、途中で研究計画を見直す必要に迫られた。これらの理由により、課題開始以来、研究の遅れが生じていた。令和4年度以降は、比較的順調に研究が進められているものの、当初の遅れを取り戻せるまでには至らず、4年間の研究期間で想定していた成果を出すことができない見込みとなった。そのため遅れた分を補うべく、研究期間を延長し、令和6年度の1年間をかけて、重動句の調査・分析の成果をまとめ、更に積み残したいくつかの課題についても解決を図りたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、まず“VOV得C”型重動句の令和5年度中の研究成果について必要な修正を加えた上で、早急に学術論文の形でまとめたい。重動句は非常に多様な下位タイプを持つ構文であるので、令和5年度に“VOV得C”について明らかにした特徴が、そのままその他のタイプの重動句にも適用できるかについても順次検証を進めて行きたい。重動句の下位タイプとしては、他に結果補語を用いるもの、数量補語を用いるもの、可能補語を用いるものが常用されるが、これらの意味や構造にどのような共通性や差異が見られ、各タイプがどのように繋がり合っているのか、という点についても整理をおこなう必要がある。これらの分析を通して、重動句の全体的様相をできる限り明確にすることが令和6年度の目標である。また、重動句と関連のある“A就A在X”構造についての追跡調査を令和5年度中に実施することができなかった。この構造については過去に発表した論文で積み残した問題があるので、これらの点についての分析を深めていきたい。
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