研究課題/領域番号 |
20K00598
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京大学 (2023) 東京外国語大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
伊藤 智ゆき 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20361735)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 韓国朝鮮語 / 長母音 / 中期朝鮮語 / 借用語 / 歴史言語学 / 朝鮮漢字音 / 音素配列論 / 韓国語 / 繰り返し学習モデル / 音韻論的隣接語数 |
研究開始時の研究の概要 |
現代標準韓国語(ソウル方言)は弁別的なピッチアクセントの対立を持たないが、辞書等に記載されている伝統的な語形には、中期朝鮮語(15-16世紀)の上声(上昇調)に対応する長母音が現れ、かつてのピッチアクセントの対立が部分的に保存されている。ただし、これらの長母音は、現在のソウル方言話者にはほとんど観察されず、母音長の対立は、標準韓国語においては事実上ほぼ完全に失われていると言ってよい。本研究は、標準韓国語(ソウル方言)を対象に、特に名詞について音素配列論的パターンを分析することで、同方言における長母音の段階的消失過程に関する計算モデルを構築することを目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までに引き続き、標準韓国語における長母音分布と消失過程に関連する資料の拡充を図るため、今年度は英語・日本語等からの借用語における長母音の分布について調査を行った。英語・日本語等からの借用語は中期朝鮮語(15-16世紀)の弁別的アクセントが失われた後に韓国語に導入されたものであり、長母音に関して他の語彙種とは性質が異なる可能性があるが、借用語適応パターンの検討は、固有語・漢字語資料のみでは必ずしも得にくい、標準韓国語長母音の消失過程を推定するための資料となり得る点で、重要である。なお、現代韓国語の代表的な辞典である『標準国語大辞典』(国立国語院)においては、固有語・漢字語の長母音表記は見られるものの、借用語の長母音は表記されていない。そのため、長母音がまだ失われていない時代の借用語資料のうち、李鍾極『鮮和兩引 モダン朝鮮外來語辭典(The New Dictionary of Foreign Words in Modern Korean)』(京城:漢城圖書、1937年)、金敏洙『國語表記法辭典』(ソウル:一潮閣、1975年)を中心にデータの収集を進め、また関連論文の検討を行った。 一方、長母音消失過程推定の参考資料として、咸鏡道方言の録音データに見られる長母音の実現例についても分析を進めた。それにより、同方言は(少なくとも録音データに関する限り)中期朝鮮語アクセントに対応する母音の長短の区別は見られないが、原則として二音節の縮約形に、一貫して長母音が実現していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までは特に韓国語の固有語・漢字語を中心に長母音の分布と歴史的発展、方言差等について検討を行ってきたが、今年度はそれに加え、新たに借用語データの収集と分析を進めている。また咸鏡道方言録音データにおける長母音の実現についても用例を集め、原則として二音節の縮約形に見られることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、標準韓国語長母音に関するデータ収集を進める。また英語・日本語等からの借用語を原語と対照させ、それにより、どのような条件において長母音が現れるか、検討を行う。更に咸鏡道方言録音データ中の長母音の実現について、より詳細な音響音声学的分析を行い、アクセント・母音の種類等もふまえ、基底の短母音との比較を行う。
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