研究課題/領域番号 |
20K00634
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
福島 みどり (天野みどり) 大妻女子大学, 文学部, 教授 (10201899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 構文 / 節構文 / ノガ / ノヲ / モノヲ / 逆接 / 逸脱文 / 言語直観 / モノガ / 従属節 / 主観性 |
研究開始時の研究の概要 |
実際の言語使用場面では、様々な逸脱文が出現している。本研究は、そうした逸脱文の意味を母語話者が同じように理解するのはなぜかを、「構文の鋳型」という観点から明らかにする。 また、母語話者と日本語学習者(非母語話者)で、日本語の逸脱文についての意味理解が異なるかどうかを調査し、異なりがある場合、その理由を考える。「構文の鋳型」に関する慣習的知識があるかどうかが、逸脱的意味の理解に関わることが、この調査で明らかになると予測している。 本研究の結果は、構文的知識の重要性を明らかにし、その知見は言語教育分野にも一定の貢献があると考える。
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研究実績の概要 |
本研究は、日常会話や新聞・文学作品等、様々な現代日本語の使用の場で実際に用いられる、容認度の低い文について、母語話者がどのように意味理解するかを、母語話者の持つ「構文」に関する文法的知識の観点から明らかにしようとするものである。特に節を含む種々の構文の実例を観察することにより、柔軟な文の意味理解の過程と文法的知識との関係を明らかにしようとしている。 本年度は、これまで本研究が明らかにしてきた、文法的に逸脱的特徴を持ち、逆接の意味を表すような「ノヲ節」と「ノガ節」を含む構文群が、状態変化の意味を表す他動詞構文・自動詞構文に生じていることに着目し、こうした逸脱形式の派生が自他対応していることを論じた。この考察は、一般向けの図書『日本語の逸脱文――枠からはみ出た型破りな文法――』(教養検定会議、2023年2月発行)にまとめた。 さらに、「ノガ節」と「ノヲ節」に生じた逸脱が、主格助詞「ガ」と対格助詞「ヲ」の問題としてより広く見られる現象なのかを明らかにするために、本年度は「モノヲ節」の実例をコーパスを用いて収集・観察し、逸脱的な「ノヲ節」との違いの一端を明らかにした。すなわち、逸脱的な「モノヲ節」の文は、①「~すればよいものを、~しない」型が多く、②「モノヲ節」が後置されることが多い。また、③発話者の評価や期待に反する行為への悔しさ・驚きなどの心情、さらに、行為者へのマイナス評価の表現が共起、または含意することが多い。④「モノヲ」と文法的に関係する述部の意味は、意図的行為が多く、対格助詞「ヲ」の意味が保持されているなどである。これらは、「接続助詞的な「ものを」の文の意味」(『大妻国文』54、2023年3月発行)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対面による言語調査の代わりに、種々の言語理論に関する吟味や、逸脱文の実例調査をやり直すなど、逸脱文理解に関わる構文研究の基盤に関する考察を深めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は、コロナ禍による海外渡航規制も緩和されるため、マギル大学(カナダ・モントリオール)の日本語教育機関を通し、非母語話者の逸脱的日本語文意味理解についての内省判断調査を集中的に行う予定である。 23年度には、これまでの本研究の成果の中間報告として、学会研究発表を予定している。その一つとして、カナダ・モントリオールで8月に対面開催されるカナダ・日本語教師会の年次大会で口頭発表を行うことが決定している。 22年度に明らかにした逸脱的な「モノヲ節」の文についての考察をさらに精緻化し、23年度中に、「ノガ節」「ノヲ節」「モノガ節」「モノヲ節」の文法的特徴・意味の異なりを明らかにする予定である。
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