研究課題/領域番号 |
20K00643
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 健三 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (00221656)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 書記モード史 / 変体仮名 / 語誌研究 / 近代日本語 / 欧化政策 / カタカナ先習 / 平仮名先習 / 仮名生成 / 仮名語彙 / 書記論 / 文字論 / 葛原勾当日記 / 印判印字システム / 仮名システム / 平仮名 / 近現代日本語 / 幕末明治期 / 日本国憲法 |
研究開始時の研究の概要 |
平安時代から三種の文字種を使用し続けている日本語において、「平仮名」概念には、その成立期から現在に到るまで、様々な変容があったことが、これまでの研究によって、ある程度語られてきている。 一つの書記システムの三種の文字が使われる以上、それぞれに価値変容があることは当然考えられるが、本研究は、その中でも2つの社会変動時期にスポットを当てて、それぞれの時代にいて「平仮名」がどのように認識されていたかを確かな証拠を以て明らかにすることを目的としている。 二つの時代とは「近世末~近代初期(幕末明治期)」と「近代終期(戦後期)」である。
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研究実績の概要 |
2022年度に行った研究実績は、2023年3月に刊行された書籍『国語語彙史の研究』に収められた論文「変体仮名の語誌」に結実している。本研究課題は、近代における「仮名」の意義の変容を主要なテーマとしているが、仮名に関しては、本論文で扱った変体仮名の使用/不使用の差が近代という歴史的ポイントで生じる。そこで、当該年度に行った研究は、その視点から「変体仮名」ということばの成立と展開を、国立国会図書館所蔵の、変体仮名に関わる多量の近代文献を精査することで「語誌」として追い、「変体仮名」という語の初見例を確認し、その時点での意味用法を、関連語彙の抽出を行うとともに、意味分析を行った。 まず「変体仮名」という語が明治期に現れ、それ以前には遡らないことは、大型辞書の用例などからも、ある程度予想できたが、大量の文献調査によって、その点も確認した。しかし、その指す意味は、辞書などにも記され、現在も使われている意味とは、異なっていることを明らかにした。現代用いられる「変体仮名」は、通常用いる仮名とは〈異なる〉字体の仮名文字、という意味であるが、当初の用法からは、実際に綴る文中において〈変ずる〉字体の仮名文字、というほどの意味であったことが判った。しかし、その意味は急速に失われ、現在のような意味に転じていく。その理由についても考察をすすめた。その結果、当時の世界情勢の中で日本が置かれた立場は、「脱亜入欧」「欧化政策」と呼ばれる、欧米の価値観に近づく姿勢であったが、日本語を綴る仮名文字も、ローマ字にはしないにせよ、ローマ字に基づく文字思想による一種の欧化が仮名文字に対して生起したイベントであったと解釈できることを述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、いささかの調査研究方針の変更は余儀なくされ、当初予定していた資料調査については遅れがあることは認めざるを得ないが、一方で、自身の問題意識の進展・深化により、研究課題として掲げた、近代における「仮名」の文字認識に関わる議論は更に深められたと考えている。よって総合的には、「おおむね順調」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2点にまとめたい。1点は研究環境に関わる点で、「資料調査環境の整備(電子化)」である。この2年ほどで、研究者自身の視力低下が著しくなってきたことも背景にあるが、より効率的で正確な文献資料調査を行うため、新たな資料入手よりも、入手した資料文献・研究文献の電子化にいささか重点を移した上で、より精査しやすい環境を構築したい。 もう1点は、研究内容に関わる点である。本研究課題は、その対象時期を幕末~明治と、戦前~戦後という、日本の大きな社会的変革期における、仮名文字認識の変化・変容をテーマとしているが、そのテーマを追うとともに、日本語のみに依らず、言語システムに対応する書記システム、という観点から書記システム全般に関わる議論をも進展させたい。書記システムという観点から、そのシステム内要素の一つである文字の在り方を考えることで、より説得的な議論に進展できるよう努めたい。
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