研究課題/領域番号 |
20K00651
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
平井 吾門 立教大学, 文学部, 准教授 (80722214)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | うつほ物語 / 更級日記 / 国語辞典 / 古語辞典 / 更科 / 宇津保物語 / 国書辞典 / 栄花物語 / 倭訓栞 / 雅言集覧 / 古語辞書 / 国語辞書 / 辞書史 / 国語辞書史 / 国語学史 / 用例 / 古典語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国語辞書・古語辞書が古典語の用例採取に際してどのような基準を用いてきたのか、通時的な比較調査の中で総合的に明らかにするものである。近世以降の代表的な国語辞書を選定し、どの程度の用例異同があるかを確認していくとともに、(a)その用例が数ある古典籍の中で他にどの程度存するか、(b)該当箇所の資料性はどう評価されてきたか、(c)切り出された文脈は語義説明を資するか否か、という点を中心に分析していく。
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研究実績の概要 |
江戸時代に編纂された古語辞書『雅言集覧』は、膨大な古典用例を収めており、なぜどのような編纂過程を経て成立したのかという点に関して依然として未解明の点が多い。 これまでの研究で、主たる典拠である『源氏物語』『枕草子』『栄花物語』『うつほ物語』について解明を進めたが、今年度はさらに『更級日記』の扱いに注目し、『雅言集覧』において同書がどのような意義を有しているのかについて調査を進めた。また、前期に研究を進めた『うつほ物語』については、「『雅言集覧』における『うつほ物語』用例」として『近代語研究 第二十四集』に投稿している。 『更級日記』を取り上げるのは、有名古典であるからという理由だけではない。同書には独特の言葉遣いが多く見られるという指摘や、狂歌師や戯作者としての立場から文芸創作を行っていた『雅言集覧』の編者・石川雅望が、創作において『更級日記』に大きな影響を受けているという文学研究の指摘をふまえても、改めて日本語研究の立場から同書の扱いを確認しておく必要があるからである。特に、『更級日記』の本文が江戸時代には乱れており、明治時代になって正しい姿が復元されたという事実があるが、『うつほ物語』といった作品の扱いと同様、長い文脈に依存しないで古典用例を切り出すことができる辞書編纂の立場から、敢えて積極的に『更級日記』を活用していった可能性を指摘した。その際、先行する辞書『倭訓栞』においても『更級日記』の使用が認められることから、同辞書を乗り越えるべき対象と捉えていた『雅言集覧』にとって、『更級日記』を活用せざるを得なかったという側面についても考察を進めている。この成果は「『雅言集覧』の『更級日記』用例小考」として『立教大学日本語研究』30号に投稿している。 また、コロナ禍で長らく調査が難しかった原本調査を再開し、盛岡にある『雅言集覧』を中心とした資料の使用実態を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度の途中で海外からの委託を受けて『倭訓栞』の調査を別途進めることとなり、科研費による研究と重ならないように調査を進める必要が生じたことで、本研究そのものの進展がやや遅れてしまった。ただし、当該委託研究は既に海外での研究発表を終えて論文化を進めているものであり、その成果が成就した暁には本研究を支える重要な基礎を為すことになる。 また、本来であれば2023年度に研究を終了させる計画であったが、コロナ禍で資料調査が進まなかったというネガティブな側面に加えて、国会図書館デジタルコレクションや次世代デジタルライブラリーによる全文検索の整備が進んでいることをふまえて、当初想定した以上の規模で古典用例や辞書検索ができるようになり、当該研究期間においてもそれらの成果をある程度取り込むことが必須であると考え、研究期間の延長を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル画像やオンラインデータの調査可能範囲が増えてきた一方で、改めて『雅言集覧』の原本調査の必要性も見えてきたため、改めて資料調査を進めていくことになる。特に、写本でしか伝わらない『雅言集覧』の後半部分について、写本ごとに情報が錯綜している現状があるため、その整理を進めて次なる研究にもつなげていきたい。また、国立国会図書館が公開しているOCR技術を活用して、自前の画像資料を全文検索可能にするような環境が構築可能か模索する必要がある。それによって、調査可能な範囲や優先度を見極めつつ、状況によってはインターネット上で未公開の資料を積極的に調査していくことになる。
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