研究課題/領域番号 |
20K00653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 広島文教大学 |
研究代表者 |
橋村 勝明 広島文教大学, 教育学部, 教授 (30330674)
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研究分担者 |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40390257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 表記体混淆文 / テキストデータ / 和漢混淆文 / 変体漢文 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、中世における一資料中にみられる漢字表記文と漢字片仮名交じり表記文との混淆現象を、日本語学上の質的な問題と捉え、文体との関係を解明しようとするものである。混淆現象がみられる資料を本研究では「表記体混淆文」と称し、表記体混淆文における漢字表記文の文体的性格を明らかにするとともに、漢字表記文と漢字仮名交じり表記文とが共存することによるそれぞれの文体の検討を試みるものである。また、中世には新仏教の成立を背景としつつ、神道・文学などを兼学する新たな学問的背景が成立する。そこで、資料検討の射程を従来日本語学では十分な検討がなされてこなかった神道関係まで広げ、表記体混淆文の成立について検討する。
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研究実績の概要 |
漢字文と漢字片仮名交じり文との表記体混淆文について研究するための基礎資料として、内閣文庫蔵『聖徳太子伝宝物集』の本文データ作成に取り組んだ。本データは、研究開始当初は研究期間の初期に完成の予定であったが、外字入力に予想外に時間が掛かった上、新型コロナウイルス感染拡大により長距離の移動が制限されたために片仮名小書きの確認作業が滞り、進捗が遅延することとなった。しかし2022年度には2回対面による確認作業を実施することができ、丁行付きのテキストデータを完成させることができた。また、原本調査を1回行うことができた。研究成果の公表としては、『中世真名軍記の研究』(汲古書院、2022年11月)を公刊した。本書には既発表論文である「中世真名軍記における助動詞「ケリ」の用字について」(『国文学攷』第250号,2021年6月)を収録している。これは、中世における漢字文(特に真名本)の一特質について言及したもので表記体混淆文における漢字片仮名交じり文の漢字文への影響を考えるための手がかりとなるのではないかと考えている。同書の結章第二節「中世の漢字と訓」において内閣文庫蔵『聖徳太子伝宝物集』にみられる「既」字訓「カクテ」についての考察を書き下ろしとして掲載した。中世の古辞書においては、「既」字は「スデニ」訓と結びついており「カクテ」との関係は指摘できない。漢字片仮名交じり文及び漢字文の用字を検討する上で、中世にあってはこのような漢字と訓との結びつきについても踏まえておかなければならないことを指摘したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染状況が収束に向かう中、対面による確認作業の実現によりテキストデータ作成作業が進んだものの、研究計画全体としては遅れており、1年間研究期間を延期することとした。テキストデータは校正作業と丁行を付すまでは至った。テキストデータ作成作業を通じて「既」字訓の「カクテ」について検討し、中世の漢字と訓との結びつきの特質について指摘をすることができたので一定の成果はあったものと考えている。しかし、原本調査を行った資料についての検討を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
作成したテキストデータに基づき、量的には漢字片仮名交じり文及び漢字文における漢字の使用傾向について、質的には「既」字訓「カクテ」にみられるような中世における特徴的な用字あるいは字訓がみられる表記体の傾向について検討を進める。また、原本調査を通して得ることのできた資料画像を活用し、より多角的に表記体混淆文の用字あるいは訓について検討を進めてゆく。このようにして研究した結果については随時成果を公表し、また最終的な報告書としてまとめる。
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