研究課題/領域番号 |
20K00656
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
木村 宣美 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (90195371)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 複数の助動詞が関わる倒置文 / 主語と助動詞の倒置が関わる倒置文 / 助動詞 be に選択される小節 / 語彙的動詞としての being / 文体的倒置 / 倒置を伴う as 挿入節 / 比較倒置 / 移動と削除に基づく分析 / 助動詞倒置文 / 主語と助動詞の倒置 / 2種類の連辞be / 語彙的動詞としてのbeing / 小節構造 / 上昇述語としてのbe / 動詞としてのbe / 助動詞としてのbe / 動詞としての現在分詞being / 小節 / フェイズ理論 / フェイズ / 動詞としてのBe / 助動詞としてのBe |
研究開始時の研究の概要 |
右方移動構文である倒置文には,2種類の助動詞倒置文があることが指摘されている。本研究では,より説明的妥当性を求めて,仮説「Be の非定形 (non-finite) である being は動詞で,been は助動詞で,be は文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)の基底構造 (underlying structure) と派生 (derivation) メカニズムに対する従来の分析の妥当性を批判的に検証し,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案する。
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研究実績の概要 |
「主語後置」と「主語と助動詞の倒置(Subject-Aux Inversion: SAI)」を混ぜ合わせた特徴を有する構文があるとする Huddleston and Pullum (2002) の分析を批判的に検証し,2種類の異なる倒置文,すなわち「主語と助動詞が倒置する倒置文」と「複数の助動詞に主語が後続する倒置文」が存在することを明らかにした。後者の「複数の助動詞に主語が後続する倒置文」は,主要部移動である SAI では分析することのできない倒置文である。この構文に対して,上昇述語としての be に基づく分析を仮定し,複数の助動詞を伴う倒置文の基底構造は,概略,小節構造を含む構造(1)であるとする分析を提案した。(1)[e]TENSE/ (modal)(have)(be)[小節 主部+述部] 述語には,語彙的動詞としての being が含まれる。 本研究では,複数の助動詞を伴う比較倒置 (comparative inversion: CI) において,助動詞に複数の動詞句内要素が後続することが観察されることから,LaCara (2015) の比較倒置に対する移動と削除に基づく分析に修正を加え,複数の助動詞を伴う倒置文に対する移動と削除に基づく分析を提案した。本研究における比較倒置 (CI) の統語構造及びその派生を詳細に記述すると,以下のようになる。小節の主語に先行するのは,AUX に支配される助動詞である。助動詞 be や have が AuxP の主要部 Aux で,Aux は補部として FocusP (FocP) を取る。FocP の指定辞が焦点を担い,強勢が置かれる主語や動詞句要素の着地点である。主要部 Foc が小節の VoiceP を,Voice が vP を,v が VP を補部に取る構造を仮定した。主語が vP の指定辞の位置から,最終的には FocP の指定辞の位置に移動する。この移動は,Probe-Goal のメカニズムに基づき,値を持たない素性に値を付与するために行われる移動操作である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究の目的】本研究の目的は,仮説「Beの非定形であるbeingは動詞で,beenは助動詞で,beは文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論の枠組みで,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)の基底構造と派生メカニズムに対する従来の分析の妥当性を批判的に検証し,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案することにある。
【研究の目的】を達成するために,【研究実施計画(令和4年度)】に基づき,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)の調査及び分析により,基底構造及び派生メカニズムの解明のために抽出された統語的・意味的特性に基づき,仮説「Beの非定形であるbeing は動詞で,been は助動詞で,be は生じる文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論のもとで,2種類の助動詞倒置文の類似点及び相違点を捉えるために,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案し,本研究の分析の検証と更なる精緻化を行った。令和4年度に得られた研究成果は,学術論文「複数の助動詞を伴う後置文の派生」『人文社会科学論叢13号』(弘前大学人文社会科学部)として公刊し,演題「倒置文:連辞 be の語彙的特性に基づく分析」(名古屋言語学研究会(愛知工業大学自由ヶ丘キャンパス;令和5年3月18日))の口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実施計画(令和5年度)】令和4年度に引き続き,基底構造及び派生メカニズムの解明のために抽出された統語的・意味的特性に基づき,仮説「Beの非定形であるbeingは動詞で,beenは助動詞で,beは生じる文脈に応じて,動詞あるいは助動詞の時がある。」を仮定するフェイズ理論のもとで,2種類の助動詞倒置文の類似点及び相違点を捉えるために,異なる基底構造と派生メカニズムに基づく分析を提案し,本研究の分析の検証と更なる精緻化をする。 令和4年度(本研究の最終年度)に実施することが計画されていたが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,実施することのできなかった計画(国内外の学会や研究会に参加し,本研究課題に基づく研究に資する資料を収集する)を確実に実施し,令和2年度-令和4年度に得られた研究成果に基づく研究を更に発展させることができるように,2種類の助動詞倒置文(①主語と助動詞の倒置が関わる倒置文と②複数の助動詞が関わる倒置文)に関する幅広い調査及び詳細な分析を行う。
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