研究課題/領域番号 |
20K00663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大森 文子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 教授 (70213866)
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研究分担者 |
渡辺 秀樹 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (30191787)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | シェイクスピア / Sonnets / Hamlet / 植物名メタファー / 動物名メタファー / 和歌 / 翻訳 / Shakespeare / メタファー / 時間認識 / 擬人化 / 繰り返し / 列挙 / 連句 / メトニミー / 音韻効果 / レトリック / 逆転 / 音韻 / 英詩 / 認知詩学 / 詩 / 英語史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、古英詩から現代詩までの各時代の代表的英米詩人の作品に見られるメタファー表現を対象とし、メタファー表現群とその内部での構造性を分析し、メタファー成立の背景となる認知メカニズムを解明することを目的とする。人間の創造的なメタファー思考の産物である詩作品を研究対象にするとともに、詩的メタファーと日常言語の慣用メタファーとの認知的連続性を探るため、大規模コーパスのデータ分析を援用する。共時的構造と歴史的連続の包括的研究という単独では困難な複合的課題を、認知言語学者と英語史専門研究者との共同研究により遂行し、認知詩学の方法論を確立し、この分野のさらなる発展に寄与することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、主としてシェイクスピアのSonnetsのレトリックを考察した。本詩集の1番から126番までの詩群を対象とし、詩人の青年に対する認識のしかたと愛情について、人間を〈植物〉として理解するメタファーの観点から考察し、詩に明示されない隠されたレトリックを探究した。その結果、ギリシャ神話に由来する文化モデルに基づき、自己愛の強い青年を表す隠された比喩媒体として〈水仙〉(narcissus)を選んでいること、また、ナルキッソスの自己愛を象徴する〈水鏡〉に対応する〈鏡〉のレトリックが、ソネット詩群の中に明示され、あるいは文法形式や詩人の詩作態度の中に隠されていることを明らかにした。さらに、詩人が同じ内容をソネット詩群の中に繰り返すという表現手法に、ナルキッソスを愛する〈エコー〉のレトリックが隠されていることも併せて論じた。年度末には、英詩に対する認知詩学分析の手法を日本の和歌の分析に応用し、『百人一首』所収の「花」を詠んだ歌のレトリックに着目し、そこに凝縮された、現代人に共通する認知の仕組み、日本文化特有の美意識について考察するとともに、和歌が英語に翻訳されたときに、そのレトリックや美意識が英語ではどのように表現されるか(あるいは表現されないか)についても、数種の英訳を比較することにより併せて考察した。 研究分担者は、継続中の英語動物名の人間比喩の構造と歴史に関する研究の一環として、シェイクスピアのHamletを研究対象とし、本作品に頻出する哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、虫など広範囲の動物名のメタファー義を考察し、日本語と英語でのメタファー義の相違を明らかにした。加えて、英語では別語が与えられてメタファー義も異なる2つの動物名が、日本語では同じ名前になることに日本人は気づきにくいこと、そして日本語訳ではそれらのメタファー義の相違も消えてしまうという翻訳上の問題を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、2022年度までの新型コロナウイルス流行の影響を受けて遅れていた研究を進捗させるべく努力したが、まだ計画通りの進捗には至らなかった。研究代表者が所属する部局が2022年に改組した影響もあり、また所属機関により課せられた重要な業務への従事に要するエフォートが大きかったこともあり、研究に充てるべき時間と労力が大幅にそがれた。研究分担者にとっても、2022年度の所属大学の異動に伴い、研究環境の整備と新たな勤務先で課せられた運営業務の遂行に時間を割くこととなった。研究代表者、分担者ともに、資料収集等のために予定していた国内出張や海外出張ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も、引き続きShakespeareの詩作品を中心に、現代にいたるまで射程を広く取り、さまざまな詩作品を対象として、メタファー成立の背景となる認知メカニズムの解明に向けて考察を深める予定である。さらに、英詩に対する分析手法を日本の詩歌、特に和歌のレトリックの分析にも応用し、英語と日本語の詩のレトリックの共通点と相違点について考察を深めることを計画している。研究分担者が予定している英国での研究資料収集活動は、勤務先移転に伴う業務スケジュールの大幅変更により、計画が立てにくい状況になっているが、できる限り工夫して研究を遂行するよう努力する。
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