研究課題/領域番号 |
20K00668
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
村尾 治彦 熊本県立大学, 文学部, 教授 (50263992)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 日英比較 / 構文ネットワーク / 認知文法 / 増減表現 / 構文 / 2つのnatural path / 自他動詞志向 / ネットワーク / 事態認知モデル / 日英語比較 |
研究開始時の研究の概要 |
英語は他動詞的な構文、日本語は自動詞的な構文の広がりが大きいことを構文ネットワークを提示しながら主張するMurao (2018)の研究および、Langacker (1991, 2008)の行為連鎖と自律・依存の階層化という2つのモデルに基づく日英語の好まれるnatural pathの違いから日本語の自動詞志向、英語の他動詞志向を考察した村尾(2018a, b)の研究を、さらなる自他動詞的構文を検証して発展させる。さらに、これを従来日英語の表現形式の違いとして指摘されてきた諸構文に拡張して考察することで、このモデルが日英語の語彙・文法や表現パターンの違いに幅広く適用できるかを検証する。
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研究実績の概要 |
2021年度から開始していた、repeated +NP, increased/ decreased +NPなどの繰り返しや増減を表す英語の名詞句表現と対応する、「〇〇が繰り返される・増加する・減少する」のような日本語の動詞表現の例について、増減を表す表現がより見つかりやすかったことを踏まえ、2022年度は増減表現に絞って例文収集を行い、日英語間での比較を行った。 日英語の増減表現パターンにおいて、日本語の動詞志向性(「機能が落ちる」など)と英語の名詞志向性(decreased functionなど)の違いが一般的傾向として見られたが、動詞と名詞の概念化過程に反映される順次的走査(出来事が展開していく様子を時間軸に沿って順にたどって捉える方法:動詞の概念化に反映)と総括的走査(出来事の展開の各段階を1枚の絵のように重ねて一括で捉える方法:名詞の概念化に反映)(Langacker (2008)など)の変換の柔軟性のために、日本語に比べ英語が増減表現を名詞表現で表す傾向の要因の1つになっている可能性を示唆した。また、日英語における志向性の違いと、その背後の概念化の抽象度の違い(英語がより高い抽象度で概念化)が連動し、さらに状況内認知と状況外認知(中村(2019)、本多(2005)、池上(2011)など)と結びつくことで日本語の動詞志向、英語の名詞志向につながるという結論を得た。 また、more, less など、相対的な多少の比較を表す表現パターンや単純な形容詞+名詞の表現においても増減表現と同様の表現パターンの違いの傾向を確認し、日本語の動詞表現の概念化パターンとなるスキーマと英語の「名詞修飾表現+名詞」の概念化パターンとなるスキーマが一貫して反映され、それぞれの言語の構文ネットワーク上で広く活性化している可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
increased/ decreased +NP, 名詞+増減を表す動詞など、増減を表す英語の名詞句表現と対応する日本語の動詞表現を比較し、その背後の概念化過程の抽象度の違いや状況内・外認知と結びつけることで両言語の志向性の違いを考察したことは一定の成果であり、予定通りといえる。ただし、他動詞構文、自動詞構文の考察で基盤にした英語に好まれたANP、日本語に好まれたTNPの2つのnatural pathが増減表現の日英語の表現パターンの違いにも関与しているかどうかについては今回それを示す現象や根拠を示すことができなかった。また、繰り返しを表すrepeated +NPの分析は十分例文を収集できなかったため行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回、日英語の増減表現などにおける表現パターンの違いの背後にある要因を概念化の抽象度の違いや、状況内・外認知と関連付けて考察したが、今後は、英語に好まれるANP、日本語に好まれるTNPの2つのnatural pathが増減表現などにおける動詞志向、名詞志向と関連性がないのかどうか調べる必要がある。また、今回は文レベルのみを主に考察対象としたが、より同構文の特性を明らかにしていくためには、談話上での同構文の機能など、談話上における構文特性を調査していく必要がある。 さらに、増減表現など動詞志向、名詞志向の日英語の表現パターンを反映した構文と構文ネットワーク上のそれらの構文の位置づけの関係をさらに考察する予定である。
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