研究課題/領域番号 |
20K00723
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
|
研究機関 | 帝京大学 (2022-2023) 新潟大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
有田 佳代子 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50541752)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 第二次世界大戦期ベトナム / 日本語教育史 / 日仏共同支配期 / 日本プロパガンダ誌 / ベトナムの日本語教育 / Tan A 日本語講座 / 川村重和 / 木村繁雄 / Tan A |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1941年から1945年の、いわゆる日仏共同支配期ベトナムにおける日本語教育の一端を、日本プロパガンダ誌に連載された日本語解説と、その執筆者である在ベトナム日本人日本語教師の言語教育観を通して考察するものである。扱う史料『Tan A(新アジア)』はこれまでの日本語教育史研究で未使用のものであり、新しい歴史的事実の開示が期待できる。かつ、現在の日本語教育環境の理解と改善のため、当事者として歴史をふまえた説得力のある社会的提言を行う基盤となることを目指す。
|
研究実績の概要 |
『Tan A』の日本語講座は、1942年10月発行の創刊号から1943年4月発行の第12号に連載された「実践日本語(Tieng Nippon thuc hanh)」、1943年6月発行の第15号から1944年10月発行の第45号に連載された「日本語(Tieng Nippon)」の、2講座がある。前者の全容については前年度の論考で、その概要を報告した。 今年度、後者の内容目録が完成し、日本語・日本文化研究第6回国際研究大会(2023年12月 九州大学)において口頭発表を行った。ここでは、全30課それぞれの概要とそこで使われた例文の特徴、およびその執筆者であるS.Kimuraの人物像を報告した。S.Kimuraについては、1942(昭和17)年8月のハノイ大使府と東京の外務省とでやりとりされた電報(198号,199号,200号,742号)を根拠とし、1942 年夏以降に台湾総督府からサイゴン(チョロンの共栄会支部)に日本語教師として派遣された木村繁雄書記ではないかと当初より推測してきた。台湾中央研究所臺灣史研究所で木村の履歴書等は入手したものの、仏印渡航の査証が判明せず、断定はいまだできない。しかし、Tan A 自体が日本大使府中央情報局の強い管理下にあったこと、特に北部では仏印共栄会が中心となり日本語普及を行っていたことを考えると、当初北部に派遣予定でありその後サイゴン派遣に変更された日本語教師としての木村繁雄が、Tan A にも日本語講座を執筆した可能性は高い。木村は、1902年佐賀県生まれで1928年に公民学校助教諭となった。文部省で「思想問題ニツキ受講ス」等の経歴もある。36 歳で「渡臺」し臺灣公学校訓導となり「小学校児童ニ對スル國民精神涵養ノ具体的方策懸賞論文」「時局ニ對處スル教育ノ実際的研究」等執筆した。1940年に総督府法院書記に任命されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『Tan A』のふたつの日本語講座全課の翻訳が終わり、どちらも内容目録が完成し概要を報告した。 前半の「実践日本語(Tieng Nippon thuc hanh)」の執筆者川村について詳細(東京外国語学校(現・東京外国語大学)で仏文学を学び、渡越し仏印派遣軍報道部に所属し、戦後に福島大学で教えた川村重和名誉教授 1988年86歳没)が判明した。 後半の「日本語(Tieng Nippon)」の執筆者S.Kimuraについては断定はできないが、当初より推察してきた台湾総督府よりサイゴンに派遣された木村繁雄書記である可能性は高く、その経歴等についても公開/報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
当該資料のふたつの日本語講座「実践日本語(Tieng Nippon thuc hanh)」および「日本語(Tieng Nippon)」の、文法項目や例文等の内容目録は完成し概要を公開したが、それぞれ紙幅や発表時間の制約のために全体を公開しきれていない。また、コースデザインや語彙選択の背景にある日本語教師の言語教育観についても、十分な公開に至っていない。 したがって、今後は、紙幅の余裕のある媒体において研究成果報告を行いたい。
|